ソーシャルアクションラボ

2022.10.18

コンプレックスは芸術? 国内外で活躍、4人組バンドの斬新さ

「NEOかわいい」とのコンセプトを掲げ、国内外で活躍する4人組バンドのCHAI(チャイ)。世間で言われる「可愛さ」にとらわれず、コンプレックスさえも愛して「そのままでいい」と発信し続ける。メンバーのマナさん(ボーカル・キーボード)が考える「可愛い」とは、そして、音楽に込める思いとは――。【岩本桜、北村栞、高良昂佑】

「目ちっちゃい 鼻低い くびれてない 足太い ナイスバディ!」

代表曲のひとつの「N.E.O.」。アップテンポなメロディーに、「そのままがずっと 誰よりもかわいい」とポジティブな歌詞がのせられている。

ミュージックビデオもユニークだ。人によってはコンプレックスと感じる、一重まぶたの女性、しゃくれたあごの男性らが登場し、それぞれを「クールアイ」「ハリウッドフェイス」と呼ぶ。

音楽を通じて、コンプレックスも個性として前向きに捉えようと訴えるCHAI。彼女たちは、以前からポジティブ思考の持ち主だったのだろうか。マナさんに聞くと、「ぜーんぜん。めちゃくちゃネガティブです」と意外な答えが返ってきた。「そもそも、4人ともすごくコンプレックスが強いメンバーです」

コンプレックスとともに

マナさんと、マナさんの双子でボーカル・ギターを担当するカナさんには以前、「二重になりたい」という悩みがあったという。2人は人見知りであることにも引け目を感じていた。

ベースのユウキさんは太れない体質に苦労していた。ドラムのユナさんは顔の輪郭を見せるのが嫌で、髪の毛で顔周りを隠していた時期もあった。

見た目や内面に葛藤を抱えていた4人が「NEOかわいい」「コンプレックスはアートなり」とまで言えるようになった転機とは何だったのか。

「音楽をやろうと思った時、『自分たちにしかないものは何だろう』って考えたら、それぞれがコンプレックスを抱えて生きてきたことをテーマにすることだった。『それじゃん! 完璧じゃないからいいじゃん!』と思ったのが始まりです」

「NEOかわいい」は、元はといえば、自分たちを救うために作った言葉だった。学生時代、クラスの中でみんなから「可愛い」と言われる女の子はほんの一握り。それなのに、女の子を褒める言葉は「可愛い」だけ。「それ以外に褒める言葉ないんかよ」。マナさんはずっとそう感じていたという。

「だから『NEOかわいい』という言葉を作って、自分たちに言い聞かせた。自分たちが言われたかったことを言ったのが始まりです」

世間で言われている「可愛い」「良い子」のイメージ、「女だから」「男だから」という無言のプレッシャー。マナさんもこういった固定観念に振り回されたり、怒りを感じたりすることがあったというが、それが音楽を作る原動力にもなっている。

「言葉で伝えると説教くさくなるし、言葉だけだと『お前の分際で何言ってるんだよ』って思われるかもしれない。でも音楽に出合って、『これだったら自分の言いたいことを言える』と思いました」

元々、4人はルックスにコンプレックスを持っていたというが、お互いがメンバーと出会い、CHAIとして活動する中で、その意識は変わっていった。

「会った瞬間に(メンバー同士で)褒め合っていた」とマナさん。メークで二重にしていたマナさんとカナさんは、メンバーから「一重の方が絶対にかわいい」と言われ、二重にするのをやめた。

コンプレックスを隠すため、口元を手で覆うようにして笑っていたユウキさんは、今では手を添えずに大笑いしている。顔周りを髪で隠していたユナさんも輪郭を隠さないようになった。褒め合うことで、お互いに自信を付けていった。

マナさんは、自分の気持ちを高める努力もしている。「鏡に向かって自分を褒めるようにしています。例えば朝起きた瞬間に『今日も可愛いよ』って言う。まずは自分で自分を褒めないと。誰かに褒めてもらえると思っても、そんなことはないから。自分(の気分)を上げる努力は大事です。自信って、何もせんとなくなっていくから」

一方で、世の中には自分のコンプレックスを克服するため、メークや整形の力を借りて別人のように変身する人もいる。こうした人たちを、マナさんはどう見ているのだろう。

「その子が幸せなら良いと思うし、別に否定はしない」と前置きした上で、「だけど『そのままでも可愛いよ』って伝えたい。もし私が彼氏だったら、絶対にそう言うけどね!」

「可愛い」に正解はない

インスタグラムなどのネット交流サービス(SNS)から、美容やおしゃれに関する情報が止めどなく流れてくる時代。「痩せないとダメ」「もっと可愛く、かっこよくならないと」――。そんなプレッシャーにさらされる今の時代に学生だったとしたら、「死んでいたと思う」とマナさんは言う。

「小さいころから、いじめられたり何か言われたりしても『違うし』って絶対に言い返してきたんですよ。自分が弱いって知っていたから、自分を守る手段だった。だから思う存分、自分を守って! (中傷に対して)『笑うんじゃねーよ』って言っていい。嫌われていいよ、嫌われろよって思っちゃう。(私が)嫌われてきたから大丈夫!」

マナさんにとって「可愛い」とは何か。こう問うと、こんな答えが返ってきた。「可愛いに正解はない。マルもバツもない。全員が生まれた時から二重丸!」

「女の子はこうするのが可愛いとか、男の子はこれがかっこいいとか、そこを目指さなくたって君のいいところは必ずあるって私が証明する。CHAIを見て、女性にもいろんな形があると知ってほしいし、何かの一歩になったらと思う」

自身もコンプレックスに悩み、世間の「可愛い」に近づこうと努力しては苦しんできた。その経験を持つCHAIが発するメッセージは、同じ悩みを持つ全ての人たちに送るエールであり、生き方の提案なのだ。

CHAI

双子のマナ、カナに、ユナとユウキで編成された4人組、「NEO―ニュー・エキサイト・オンナバンド」。2017年、“NEOかわいい”“コンプレックスはアートなり!”というテーマを掲げて発表されたファーストアルバム「PINK」が各チャートを席巻。その後、海外デビューも果たし、日本を代表する世界的なバンドとしてその存在を確立した。22年放送のNHKドラマ「恋せぬふたり」の主題歌「まるごと」や、今年9月に公開された映画「さかなのこ」の主題歌「夢のはなし」を書き下ろした。

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