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2022.10.28

梅雨期の降水量、4年周期で急増→急減 その背景は? 九州南部

 甚大な豪雨災害が梅雨期に頻発している九州南部で2002年以降、降水量の急増と急減がおおむね4年の周期で繰り返されていることが、九州大大学院の川村隆一教授(気候力学)らの研究で判明した。川村教授らは、世界各地の異常気象に関係しているとされる「エルニーニョ現象」の変容が背景にあることも指摘しており、今後の研究次第では豪雨の発生を予測できるようになる可能性があるとしている。

 研究したのは、同大学院理学研究院の川村教授と、同研究院所属の藤原圭太氏(現・京都大防災研究所特任助教)らのチーム。川村教授らは九州などで相次ぐ梅雨期の豪雨災害に着目。気象庁の地域気象観測システム(アメダス)のデータや、人工衛星による高精度の降水量推定データを活用し、梅雨期の降水量が多い熊本、宮崎、鹿児島3県のアメダス約70地点などの毎年6、7月の平均降水量を算出し、分析した。

 その結果、1980~2001年の平均降水量は、フィリピン・ピナツボ火山の噴火(91年)の影響で記録的冷夏・多雨になった93年を除いて800ミリ前後で安定。頻繁に災害級の大雨は降っていなかった。しかし、02年以降の梅雨期は不安定になり、おおむね4年程度の周期で降水量が急増と急減を繰り返していることが判明した。

 80~00年の20年間で平均降水量が1000ミリを超えた年は5回だったが、01年以降の20年間は11回を数えた。ピーク時の降水量(アメダス)も12年は1454ミリ、15年は1581ミリ、20年は1621ミリと少しずつ増えていることが分かった。

 近年も12、15、20年と4年程度の間隔で降水量のピークが来ている。降水量のピークと豪雨災害が必ずしも重なるわけではないが、12年は九州全域が大雨に見舞われ、熊本など3県で死者・行方不明者が32人出た九州北部豪雨が発生した。20年には熊本など5県で関連死を含めて死者・行方不明者が81人に上った九州豪雨が起きた。

 20年の九州豪雨が直近のピーク時と考えれば、今後数年で九州豪雨の時よりも降水量が多い梅雨期が来る可能性がある。なぜ、こんなことが起きているのか。

 川村教授らはエルニーニョ現象の変容を主要因に挙げる。エルニーニョ現象は太平洋東部の南米ペルー沖で海面水温が上昇する現象だが、今世紀に入り、南米沖から離れた中部太平洋の赤道域でも海面水温が上がる頻度が高まっている。

 そのため地球規模で大気が変動し、梅雨期にフィリピン海北の太平洋高気圧の張り出しがそれまでより北に延びる傾向が強まり、高気圧のへりが九州南部にかかるようになったという。高気圧の西のへりに沿って九州地方へ多量の水蒸気が流れ込み、線状降水帯が発生するような集中豪雨が増えたとみている。

 エルニーニョの変容と4年周期の降水量の大変動がどう関係するかは現時点で分かっていないが、さらに研究が進めば、豪雨予測に役立つ成果が得られる可能性がある。川村教授は「将来の豪雨の可能性を評価できれば、減災に大きく貢献できる」と話している。

 研究内容は7月、日本気象学会発行の国際学術誌にオンライン掲載された。

 鹿児島県では21年7月、停滞する梅雨前線の影響で線状降水帯が発生。同県薩摩川内市などを流れる川内川では支流があふれた。国土交通省川内川河川事務所は「今回のような研究が進められることは気象予報の精度を高め、住民の避難対策につながっていくと期待している」とコメント。福岡管区気象台業務課の担当者は「このような研究が進展し、梅雨に関する理解が深まることに期待したい」と話している。【山崎あずさ】

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