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2022.11.10

温泉に生息 絶滅危惧の貝「オンセンゴマツボ」 別府の宅地で生存

世界で唯一、温泉水の中で生息するとされる淡水巻き貝「オンセンゴマツボ」が、大分県別府市亀川で約半世紀ぶりに確認された。県の固有種で、現在も九重町や由布市での生息は確認されているが、宅地化の影響で「消滅した」とされていた亀川でもしたたかに生き延びていた。【衛藤親】

オンセンゴマツボの生息を確認したのは、水辺の生き物の愛好家でつくるNPO法人「北九州・魚部(ぎょぶ)」(北九州市)の井上大輔理事長(52)。2022年5月初め、亀川の温泉の湯が流れ込む住宅地の排水路で生き物の調査をしていて発見し、県に伝えた。6月に県と合同調査をして生息を確認した。

県自然保護推進室によると、オンセンゴマツボは36~45度の温泉水に生息する。殻は卵形で高さ4.5ミリ、径が2.3ミリほど。1962年に九重町の宝泉寺温泉で確認され、新種に認められた。65年ごろには由布市(当時の湯布院町)、別府市亀川でも見つかったが、宅地開発が進んだ亀川では67年6月には姿を消し、平地での生息地は失われたとされていた。

県は2010年に希少野生動植物に、さらに15年に天然記念物に指定した。環境省レッドリスト2020では「絶滅の危機に瀕(ひん)している」とされる絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)、レッドデータブックおおいた2022では「ごく近い将来、野生での絶滅の危険性が極めて高い」という絶滅危惧ⅠA類に位置づけられている。

県の許可を得て研究者と遺伝子レベルの解析も含めて調査を進める。さらにその存在を地元の人たちに伝える方針。井上理事長は「生息環境が大きく変わるなか、オンセンゴマツボが命をつないできたことに感動する。温泉地という独特な自然環境や生物多様性の重要性などを考えるうえでも重要な再発見」と話している。

県自然保護推進室の陶山圭二室長補佐は「絶滅危惧種が増える中、こうした生き物が見つかることは喜ばしい」と話した。

貝類に詳しい福田宏・岡山大大学院環境生命科学研究科(農学系)水系保全学研究室准教授は「約60年間も見つからなかったオンセンゴマツボが亀川で見つかったことは、その生態をより詳しく調べる端緒となる。今後の研究に期待したい」と語った。

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