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2022.11.12

持続可能な「越前がに」 漁獲減から一転、豊漁へ 福井の秘策

 冬の味覚の王様「越前がに」(ズワイガニ)の今シーズンの漁が福井県で6日に解禁された。県水産試験場の漁獲量予測は昨年度比で雄は5~15%、雌は10~20%増となり、2年連続の漁獲増を見込んでいる。さらに来年、再来年度も漁獲量は「約5%ずつ増加していく予想」と言う。この20年ほど続いていた漁獲減から“一転”しての豊漁に地元は沸くが、福井の海で一体なにが起こっているのか?

 今月6日の初競りで、重さ2・2キロの「一番ガニ」に過去最高の310万円の値が付いたズワイガニ。福井を代表する海の幸だが、その漁獲量は2000年代初頭から減少傾向が続いていた。

 県の統計によると、県内のズワイガニの漁獲量は、1964年度に1091トンあったが、乱獲の影響で徐々に減り、70年代~80年代には200トン台の年もあった。2002年度に631トンまで持ち直したものの、再び減少に転じ、20年度は319トンに落ち込んでいた。

漁期を自主的に短縮

 しかし、21年度には358トンと上昇。なぜ上向き始めたのか。ポイントは「漁期」と「デジタル活用」だ。

 福井県など富山県以西の日本海では、13年度に漁業者が自主的に雌(セイコガニ)の漁期を10日間短縮し11月6日~12月31日とした。そもそも農林水産省の省令では11月6日~翌年1月20日の間、漁が可能になっている。福井の漁業者などはそれまでも自主的に資源保護のため漁期を縮めていたが、さらに期間を絞ることで、福井沖で卵を抱いた雌をとりすぎないように努めた。ズワイガニが漁獲できる大きさに育つまでには約8年かかるといい、昨年度から続く“豊漁”は、この漁獲規制を始めた当初に保護されたカニたちが育ってきた結果だと考えられる。

デジタル日誌で情報共有

 また、福井県水産試験場は20年度から独自に、近年普及し始めた「デジタル操業日誌」を用いたズワイガニの情報共有システムを開始した。漁業者は、県から貸与されたタブレット端末に、引き上げた網にかかってしまった稚ガニの数などの情報を船上で入力。同水産試験場は、送信されてきたデータを基に、稚ガニが多くかかった海域では漁を避けるように各船に注意喚起する。リアルタイムで稚ガニの保護情報を共有し、漁場を守ることが狙いだ。同試験場によると、「カニへの適用は国内初」という。

 担当者は「漁の度に日誌に細かなデータの入力が必要になるが、漁業者も『資源を守っていこう』という気持ちで協力してくれている」と話す。現時点ではデジタル操業日誌の搭載船は7隻だが、いずれ30隻ほどに増やすのが当面の目標だという。

 県は毎年春から夏にかけて、ズワイガニの漁場である福井沖の水深200~350メートルの海域で、県の調査船「福井丸」による調査を実施している。トロール網で引き上げたカニやえい航式カメラに写ったカニを1匹ずつチェックし、甲羅の大きさや体重、足の太さ、卵の量などを計測。その結果、今年の調査では十分な大きさに育ったカニが多く、来年、再来年度に漁獲可能な大きさになると見込まれるカニも一定数が確認できたため、「上向き」の漁獲予測となったという。県水産試験場海洋研究部の河野展久部長は「大事な資源についてより正確に調査し、持続可能な漁が続けられるようにしていきたい」と話している。【岩間理紀】

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