ソーシャルアクションラボ

2022.11.17

温暖化「損失と被害」巡り協議続く 途上国、先進国と溝 COP27

 エジプトで開催中の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)は17日、会期終盤を迎え、合意文書の採択に向けて断続的に協議が行われた。気候変動に伴って生じた被害への支援を巡って途上国、先進国の溝は深く、着地点が見通せない状況が続いている。

 「我々の受けた被害は約300億ドル(約4兆2000億円)。パキスタンだけの力では復興はできず、支援が必要だ」。パキスタンのイクバル計画開発相は16日、聴衆でいっぱいになったCOP27のイベント会場で、今夏の大洪水の被害の深刻さを訴えた。

 気候変動の影響による洪水や干ばつ、海面上昇などの被害は「損失と被害(ロス&ダメージ)」と呼ばれる。COP27では同条約の会議として初めて、損失と被害への資金支援が正式な議題になった。

 中国を含む途上国グループは今回、損失と被害に特化した基金の新設を提案。これに対し先進国は、既にある基金や2国間支援などの仕組みを活用することを主張している。

 合意文書草案では、詳細な資金支援のあり方を決める期限を「2024年」とした。だが、支援の方法については①資金支援の仕組みを新設し24年から運用開始②既存の基金などを2年検証したうえで決定――という二つの選択肢が残ったままだ。

 損失と被害を巡る「南北対立」は30年以上に及ぶ。温室効果ガス排出が非常に少ないのに被害を受けやすい島しょ国や最貧国などが「過去に大量に排出してきた先進国に責任がある」として、長年被害に対する補償を求めてきた。

 世界気象機関の報告書によると、洪水など天気が関係する災害による世界の経済的損失は、1970年代は1754億ドル(約24兆5600億円)だったが、2010年代は1兆3810億ドル(約193兆3000億円)と約8倍になった。近年の気象災害の頻発、激甚化を受け、自力での対応が困難な途上国は被害に対する支援を求めて圧力を強めている。

 日本政府関係者は「損失と被害への支援が必要という共通認識はできている。だが、その方法について合意に至っていない」と話す。世界自然保護基金(WWF)ジャパンの山岸尚之・気候エネルギー・海洋水産室長は取材に「途上国側は『先進国が基金新設などに慎重なのは支援額を低く抑えようとしているからではないか』と不信感を抱いている。会議の最後の瞬間まで新たな資金支援の仕組み創設にこだわり続けるだろう」との見方を示す。【シャルムエルシェイク岡田英】

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