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2022.12.05

奥飛驒に地熱発電所 温泉水供給で地域と「共栄」 モデルケースに

 岐阜県高山市奥飛驒温泉郷中尾で地熱発電所が完成し、営業運転が始まった。地熱発電は天候に左右されないクリーンなエネルギーながら、温泉地では「温泉が枯渇する」などとして反目しあうことも多い。同発電所では取り出した熱水を地元の温泉地に供給することで、温泉地との共栄を図る考えで、新たなモデルケースとして注目が集まっている。【大竹禎之】

 この発電所は中部電力グループのシーエナジーが45%、東芝子会社の東芝エネルギーシステムが55%を出資し、設立した「中尾地熱発電」が約45億円かけて建設した。2013年から調査や掘削などの事業が始まっており、9年がかりで完成。中電グループとしては初の地熱発電所となる。

 北アルプスの焼岳を熱源とする新穂高温泉、中尾地区の地熱を利用。蒸気で直接タービンを回転させる「フラッシュ方式」を中部地方で初めて採用した。

 地下1100メートルと1500メートルの井戸(生産井)を2本掘り、噴出する蒸気と熱水を取り出し、分離機で蒸気と熱水に分け、蒸気でタービンを回し発電する。最大出力は1998キロワットで、約4000世帯が1年間で使う電力量、1400万~1500万キロワット時を賄うことができる。発電した電力はすべて中部電力パワーグリッドに売却される。

 また、分離した熱水は通常の発電所だと冷やして地中に戻すが、中尾地熱発電所では全量(毎分1000リットル)を地元のホテルなどに温泉を配る中尾温泉に温泉水として無償提供する。地熱発電に伴う熱水が温泉地に供給されるケースは全国的にも珍しく、発電所と温泉地が共存する新たなモデルにもなると期待されている。

 運転を前日に控えた11月30日には、運営会社や地元温泉業者ら約100人が出席して完成を祝う式典も開かれた。中尾地熱発電の柴垣徹社長は「副産物の温泉を供給する新しい形。さらなる発展に向けて、地元とウィンウィン(相互利益)な関係を維持し、発展に寄与できるよう努めていく」と話した。

 発電所には中尾温泉を訪れた人たちに見学してもらおうとPR館や蒸気タービンや発電機などを安全に見学できる展示コーナーも設置。観光資源としても地元に貢献し、「地域に愛される発電所」を目指すとしている。

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