ソーシャルアクションラボ

2022.12.17

三陸発「性別にとらわれない社会」 LGBTQ支援団体が催し次々

 岩手県三陸沿岸でLGBTQなど性的少数者を支援する「パートナーシップ制度」導入を求める活動が進んでいる。当事者のカップルらを自治体が公的に認めるもので、陸前高田市では市民団体が5月に発足し、啓発イベントを3回開催。大船渡市でも市民によるパネル展が開催された。東北の小都市でも「性別にとらわれず、暮らしやすい社会」を求める声が広がっている。

 宮城県と接する陸前高田市で発足したのは「陸前高田LGBTQ+を考える会」。11月初め、性的少数者やパートナーシップ制度について考える催しを開いた。人口約1万8000人の市の中心部にある商業施設を会場に10人ほどが参加。やり取りに耳を傾ける買い物客もいた。

 催しでは、司書やNPO法人職員ら3人が同性愛者や両性愛者、トランスジェンダー(体の性別と性自認が異なる人)、クエスチョニング(性的指向や性自認が定まっていない人)といった性的少数者に関する知識をまとめた書籍や映画、SNS(ネット交流サービス)を紹介した。

 続いて市内の富谷耕作弁護士が、相続や配偶者控除など法律婚による法的な効果やパートナーシップ制度について解説した。富谷弁護士は各地で制度導入が進む背景として、家族や夫婦の形が多様化していることや、法律婚以外の緩やかな関係を求める人がいることを指摘。そのうえで、パートナーシップ制度や同性婚によって「多くの人が『一緒になれてよかった』と思える状況になることが望ましい」と語った。

 最後は三陸在住の4人によるパネルディスカッション。登壇した女性は「結婚に縛られる必要はなく、大切な人と生きていけることが大事。それぞれの幸せの形があってよいのでは」と訴えた。

 「LGBTQ+を考える会」は20代後半から30代の市民を中心に結成された。啓発イベントは5月と8月にも開催したが、今回はシンポジウムなど意見を表明する場を設けた。高澤公元代表(33)は、自身も同性愛者の講演を聞き関心を深めたといい「地元で性的少数者が受け入れられる環境を作っていきたい」と意気込む。会員の木村聡(あきら)市議(29)は、市議会でも支援の必要性を訴えており「考える会としても市に(制度の導入を)働きかけたい。高齢者など、性的少数者以外で法律婚を望まない人も対象にしたい」と話す。

 陸前高田市に隣接する大船渡市でも11月上旬の2日間、市民団体「SDGsおおふなと」が主催する「私たちだって“いいふうふ”になりたい展」が開かれ、制度を紹介するパネル40枚を展示した。

 企画したのは団体の会員で市地域おこし協力隊員、臼山小麦さん(24)。東京の大学で性的少数者について専攻した臼山さんは「陸前高田とも連携しながら情報発信を続けたい」と語る。12月にも市民向け勉強会を開催した他、年明けにも当事者を招いて講演会を予定するなど精力的だ。

 東北の性的少数者団体に詳しい前川直哉・福島大准教授は「政令指定都市など一部に集中するのではなく、各地でそれぞれ取り組む分散型の活動が東北の特徴」と指摘。パートナーシップ制度は「性的少数者の存在を多くの人が認識するシンボルになっている。課題はこれだけではないので、更に理解を深めてほしい」と語った。【奥田伸一】

パートナーシップ制度

 同性同士など法律婚が認められていない性的少数者のカップルに対し、自治体が婚姻同様の関係を認証する制度。公営住宅への入居やパートナーが公立病院を受診した際の病状説明などが可能となる。兵庫県明石市など、性的少数者以外の法律婚を望まない人も対象とする自治体もある。東京都渋谷区と認定NPO法人・虹色ダイバーシティによると、10月時点で全国240自治体で導入され、東北では青森、秋田両県や青森県弘前市、秋田市が導入済み。岩手県一関市は年内に導入予定で、仙台市は検討中。

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