ソーシャルアクションラボ

2022.12.28

「子どもを産み育てられる権利の保障を」 障害者団体から声相次ぐ

 北海道江差町の社会福祉法人「あすなろ福祉会」が運営するグループホーム(GH)で、結婚や同居を希望する知的障害者が不妊手術や処置を受けていた問題の発覚後、障害者団体などから障害のある人が子どもを産み育てられる権利を保障するよう求める声が相次いでいる。知的障害のある夫婦の子育てを支援する取り組みもあることから、障害者の「子どもを産み育てるかを自分で決める権利(リプロダクティブ権)」をどう保障するかが問われている。

 軽度知的障害者の自立を支援する神奈川県茅ケ崎市のNPO法人「UCHI」は、2014年から小規模のGHを運営する。アパートやマンションを15カ所ほど借り、それぞれ1~2人が暮らす。このうち、知的障害者同士の夫婦2組が働きながら子育てをしている。

 NPO法人では、知的障害者が苦手とされる家計管理や行政への申請手続きなどを中心に支援しているという。夜に子どもが発熱した時には職員が病院に同行することがある他、地域の保健師が訪問して子育てに関する助言を受けられるように保健所と調整するなど、関係機関との「パイプ役」も担う。

 牧野賢一理事長は、別の法人で働いていた時期も含め、過去20年間で知的障害のある6組の夫婦の妊娠や出産、子育てに携わってきたという。「GHは暮らしの場で、利用者が結婚して子育てをすることは大いにあることだ。障害のある夫婦らの出産や子育てを支えるには、子どもも含めた家族を一体とする支援態勢が必要だ」と指摘する。

 ただ、国の障害福祉サービス上、障害者が援助を受けながら共同生活するGHで、出産や育児の支援は想定されていない。自宅で生活する障害者が育児する場合、家族の援助がなければ、授乳や保育所の送迎などでヘルパーのサービスを受けることができるが、公的な支援は乏しい。牧野理事長は「GHの報酬に子ども支援を創設したり、少人数のGHを運営する法人に加算したりするなど、後押ししてほしい」と要望する。

 北海道のケースでは、障害者が不妊手術などに同意しており、施設側は「強制していない」と主張している。この点について、知的障害者の家族らで作る「全国手をつなぐ育成会連合会」の久保厚子会長は「知的障害者の恋愛や性のことは学校や会社などで制限されたり、親が結婚に反対したりすることがまだよくある。親や周囲がタブー視して、きちんと性教育をしていないから、心配して駄目と言う。結婚して子どもが生まれてからも、支援する仕組みがないから反対するのだ」と問題の背景を解説する。その上で「恋愛や結婚をしたいと思うのはごく普通のこと。私たちの意識や支援の仕組みが至っていないからで、本人のせいではない。知的障害のある人にも男女交際のマナーや避妊の方法などを教えるべきだ」と提案する。

 障害者施策の普及啓発を図るNPO法人「DPI日本会議」は「国は障害者のリプロダクティブ権を保障し、一刻も早く優生思想のない社会にするための施策を講ずるべきだ」との声明を発表した。

 施設側の対応を批判するのは、旧優生保護法被害者北海道弁護団の事務局長を務める小野寺信勝弁護士だ。「施設側は強制でないと言っているが、不妊手術を提案すること自体が問題だ。施設との力関係などを考えると、利用者が本心から同意したのかどうかは疑わしい」と指摘。優生保護法が母体保護法に改正された後、政府が被害者救済や偏見解消にしっかりと取り組まなかったことが今回の事案が起きた要因の一つとし、「他の施設でも同様の事案が起きている可能性はある」と話した。【山縣章子、米山淳】

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