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2023.01.06

惨状に言葉を失った 消防署長らが見た山形・鶴岡の2人死亡土砂崩れ

 雪交じりの冷たい雨に、ぬかるんだ大量の土砂との闘い――。山形県鶴岡市西目で大みそかに発生した土砂崩れは住宅など17棟を巻き込み、80代男性と70代妻の命を奪った。原因究明に向けた調査は始まったばかりで、市が周辺住民に出した避難指示の全面解除のめどは立たない。発生から1週間を前に、現場で指揮を執った鶴岡市消防本部の今野伸消防署長(60)ら消防関係者が6日、毎日新聞の取材に応じ、捜索活動の様子を明かした。【長南里香】

 大みそかの午前1時10分、鶴岡警察署から土砂崩れの連絡が入った。現場に到着していた警察とともに、隊員らが暗闇をライトで照らす。全壊した住宅に声をかけ、午前3時半ごろ70代男性と60代女性を救出したが、別の倒壊した住宅に暮らしていた高齢の夫婦は見つからなかった。

 五十嵐多樹夫副署長(58)が現場に到着したのは午前7時14分。幅100メートル、高さ30メートルの赤茶けた崖から大量の土砂が崩れ落ち、住宅が折り重なるように押しつぶされ、流されていた。東日本大震災でも救助活動に従事した経験がある五十嵐副署長だったが、目の前の惨状に思わず言葉を失った。「なぜこんなことが起きた。手に負えない」

 気持ちを切り替え、安全を確保しつつ効率性を重視し、県内各地から駆け付けた消防本部の無人航空機(ドローン)で被災状況や危険箇所を調べる。並行して親族の協力のもと、屋根の特徴から家屋を特定。県の要請を受けた陸上自衛隊が到着し、午後2時ごろから重機も投入して本格的な捜索が始まった。

 一夜明けた元日からは冷たい雨が降り続いた。崖が崩落する2次災害を警戒し、各部隊の監視員が異音など周囲の状況に神経を研ぎ澄ませる。そんな厳戒態勢の中での作業は、何度も中断を強いられた。重機の投入から1日がかりで住宅を撤去して内部を捜したが、中から夫婦の姿は見つからなかった。

 ドローンで上空から確認した情報を基に改めて対応を協議した。土砂の流れを見極め、捜索場所の当たりをつけ手作業に切り替え、スコップや手で土砂を掘り続ける。傾斜が急で足場も悪い。粘土質の赤土に足を取られ、体力を消耗したが、3メートルほど掘り進めた土砂の中から、ようやく夫婦を相次ぎ発見した。

 「署員も自衛隊員も早く助けてあげたいという一心だった」。そう振り返る五十嵐副署長の声には、命を救えなかった無念さがにじむ。

 県内の消防隊員や警察官、陸上自衛隊員ら総勢600人態勢で、年をまたいで計50時間に及んだ捜索活動。今野署長は「現場の全体像を正確に把握して活動方針を決めるとともに、いかに早く応援の要請をするかの判断が重要だった。力を合わせなければ対応できなかった」と語る。

 春先の雪解け時期ではなく、これまで経験したことのない初冬の土砂崩れ。新たな災害への認識を改め、改善点を洗い出して共有しながら、今後の救助に生かしていく。

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