ソーシャルアクションラボ

2023.01.20

桃栗3年、盲導犬は…? ニーズに追いつかない育成

 「グッド!」。盲導犬を目指す「候補犬」の訓練中、何度もほめる言葉が響いた。頭をなでられた犬もうれしそう。ほめて育てるやり方が現在、主流なのは人間と同じだ。

 「日本ライトハウス盲導犬訓練所」(大阪府千早赤阪村東阪)は盲導犬を育成するための施設で、21頭の犬たちが日々、視覚障害者のパートナーとなるべくトレーニングを積んでいる。山道を上った場所にある訓練所を訪ねた。

 盲導犬は、国家公安委員会の認可を受けた11法人が運営する全国の訓練施設で育成されている。訓練を受けた子犬のうち、実際に視覚障害者と暮らすようになるのは約3割。盲導犬にならなかった犬は介助犬や家庭犬としての道に進む。

 育成には段階があり、繁殖犬から生まれて2カ月間は、母犬や兄弟犬と繁殖犬ボランティアの家で過ごす。昨年11月から千早赤阪村の訓練所で生まれた4頭を育てたボランティアの松本庸子さん(67)は「盲導犬につながる責任を感じる」と話す。次に生後2カ月前後から1歳までは子犬育成ボランティア(パピーウオーカー)の自宅に預けられ、人間社会で生活するための基本的なルールを学ぶ。1歳前後になると子犬たちは訓練所に戻ってきて候補犬として適性評価を受け、約半数が訓練を開始する。「シット」「カム」などのコマンド(指示)を学び、その後、街に出て交差点や段差で止まることなどを半年から1年かけて学ぶ。訓練の終盤、盲導犬希望者と訓練所で4週間、共同生活を送るなどして利用者と盲導犬のペアが誕生する。

 記者は1歳から2歳の候補犬4頭の訓練に同行した。訓練は富田林市などの街頭で1頭ずつ実施され、盲導犬歩行指導員の桑木雄介さん(45)のコマンドに沿って進み、交差点ではきちんと停止。駅では改札まで桑木さんを連れて行った。

 厚生労働省によると、国内の盲導犬は2022年10月現在で848頭。盲導犬として活躍できる期間は平均8~10年。1頭が盲導犬になるまでの育成費用は600万円以上で、約8割は寄付で支えられている。利用希望者は約3000人いるといわれ、ニーズを満たせていないのが現状だ。同訓練所の木瀬智春さん(46)は「身体障害者補助犬法施行から20年たっても、社会で理解されていない部分があり、盲導犬を持つことをためらう人もいる。もっと盲導犬が多くの人の目にふれる機会を作りたい」と話している。【大西岳彦】

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