ソーシャルアクションラボ

2023.01.31

多様な性は「身近なもの」 埼玉40市町でパートナー制度導入

 LGBTQなど性的少数者のカップルを公的に認めるパートナーシップ宣誓制度や当事者が抱える課題を学ぶ研修会などが各地で相次いで開かれている。埼玉県内で制度を導入したのは1月時点で40市町に上り、2022年4月以降に15自治体が取り入れた。支援団体レインボーさいたまの会(東松山市)の加藤岳代表は「県の性の多様性を尊重した社会づくり条例が施行(22年7月)され講演への派遣依頼が増えた」と話し、理解の広がりに期待を込める。【岡礼子】

 22日、22年7月に制度を開始した同県ふじみ野市で制度の学習会が開かれた。「人種差別では、地縁、血縁者が理解者になり得るが、LGBTQは、自分の子供だったら嫌だと思う人が多い。身近な人に受け入れられにくいことがメンタルヘルスの悪化につながってしまう」。講師を務めたレインボーさいたまの会共同代表の鈴木翔子さんが解説した。

 LGBTQは人口の5~10%(県の20年調査では3・3%)とされる。当事者でもある鈴木さんは「人口11万人のふじみ野市には5500~1万1000人が既にともに暮らしているだろうという数字に驚く。LGBTQは多種多様な人を含む。身近な問題だと実感した」と語りかけた。

 制度を周知しようと、学習会を企画したふじみ野市の佐藤学・市民総合相談室長が内容を説明した。制度は各市町でカップルの同居を要件とするか、対面での宣誓を求めるかなど利用条件が異なる。ふじみ野市の場合、同居は要件ではないが、宣誓は必要。同一世帯のケースは住民票の続き柄を「同居人」から「縁故者」に変更できる。「縁故者」は正式に認められる前の里親と子供や、続き柄の証明書がない外国籍のカップルの関係を表す場合に用いられる。実質的な利点はなく、心理的な支援の意味合いという。佐藤室長は「一担当者としては、全国一律にした方がいいのではないかと思う。利用しやすい事業になるよう研究したい」と話した。

 参加した西村正博さん(73)は「人権をどう守るかという問題。パートナーシップ制度は行政が認めたということで安心感があり、理解が進むのではないか」と話した。

 レインボーさいたまの会によると、同会が講師を派遣し、22年4月~23年1月に研修会や勉強会などを開いたのは10市町。秩父市、小川町などは市町職員向け、上里町、ふじみ野市などは市民向けだった。2~3月にも4市町が予定している。

 東京都渋谷区とNPO法人虹色ダイバーシティ(大阪市)が全国の制度導入自治体を対象にした共同調査によると、県内の利用者は22年12月時点で少なくとも175組で、前年同月の85組から倍増した。

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