ソーシャルアクションラボ

家畜ふん尿由来の燃料をロケットに 宇宙ベンチャー、燃焼試験へ

 北海道大樹町の宇宙ベンチャー「インターステラテクノロジズ(IST)」は、開発中の超小型人工衛星搭載用ロケット「ZERO(ゼロ)」の燃料に、乳牛などの家畜ふん尿から製造した液化バイオメタン(LBM)を使用し、今秋にもエンジン燃焼試験を行うと発表した。酪農地帯を拠点とするロケット企業らしい「地産地消」の試みとして注目を集めそうだ。【鈴木斉】

 ISTは元ライブドア社長の実業家、堀江貴文さんらが2013年に創業した。17年から大樹町内の同社射場で小型観測ロケット「MOMO(モモ)」(全長10メートル、直径50センチ)の打ち上げを開始。発射直後に推力を失って落下・炎上するなどの失敗を経て19年5月、MOMO3号機が民間単独開発のロケットとして国内で初めて、高度100キロ超の宇宙空間到達に成功した。21年7月にも2機が宇宙空間に到達している。

 「誰もが宇宙に手が届く未来の実現」をビジョンに掲げ、現在はMOMO開発の技術を基盤に、ZERO(全長25メートル、直径1・7メートル)の製造を本格化させている。ZEROは24年度の初号機打ち上げを目指している。

 こうした中で、新たな燃料に決まったLBMは、エア・ウォーター北海道(札幌市)が製造、供給する。同社は、大樹町内の酪農家が飼育する乳牛のふん尿をバイオガスプラントで発酵処理した際に発生するバイオガスを利用し、帯広市内に新設した専用プラントで、液化天然ガスの代替燃料となるLBMを国内で初めて製造した。液化天然ガスを使っている工場や運送会社などで、新たなバイオ燃料として実証事業を進めている。

 ISTはZEROの燃料選定で、近年、世界的に導入するロケット会社が増えている「液化メタン」を使用することを決め、調達方法を検討していた。その中で、ISTを支援する企業グループ「みんなのロケットパートナーズ」のメンバーでもあるエア・ウォーター北海道のLBMに着目。性能面や調達性に優れていることから採用を決めた。

 エンジン試験用のLBMは、バイオガスの主成分のメタンを分離・精製し、マイナス160度で液化したもので、純度は通常のロケット燃料に使用されている高純度の液化メタンと同等だという。

 関係者によると、ロケット燃料に家畜ふん尿由来のLBMを使用するのは国内では初めて。ISTの稲川貴大社長は「地球温暖化に具体的に貢献すると同時に、酪農が盛んな北海道に本社を置く企業としてエネルギーの地産地消、環境問題対策に寄与したい」としている。

関連記事