ソーシャルアクションラボ

2018.10.01

生徒発案! いじめのない学年を生んだ中学生の自主活動

・始業前の10分間、数人の班に分かれて、その日のテーマについてとりとめのない話をする

・テーマは「最近あったちょっといいこと」「サンタさんは本当にいるのか」「一番記憶に残っている夢」…

・「いいコミュニケーションはとれるが、ゴールが見えない」「いじめの芽を抑えたい」

 いじめの原因はコミュニケーションが足らないことにあるのでは。そう考えた中学生が校内で自主的に始めた活動がある。シェアコミュニケーション、略してシェアコミという。いったいどんな活動なのか。【中村美奈子、写真も】

1学期に最も盛り上がった「最近あったちょっといいこと」をテーマにしたシェアコミ。クラスごとに数人の班に分かれ、週1回10分間、たわいのない話をする=東京都三鷹市の市立第四中学校で4月26日撮影

◇いじめをなくす取り組みとして始まった

 東京都三鷹市にある市立第四中学校。3年生の教室で週1回、始業前の午前8時25分から10分間、その日のテーマに沿って、数人の班に分かれてとりとめのない話をする。これがシェアコミだ。チャイムと同時に開始。1学期に最も盛り上がったテーマは、4月下旬の「最近あったちょっといいこと」だった。
 「ちょっと、っていうと思ったより難しいよね」「普通にいいことじゃダメだし」「ちょっとの線引きが難しい」。話す内容はまったくの自由。テーマが糸口になって自然に話せればいい。司会が班ごとに発表を促すと、「新しい筆箱を買った」「朝食を1時間半かけて食べた」「好きなアニメの続編が決まった」などが挙がった。
 別のクラスでは、ほとんどの班が「いいことなんてない」と言い出し、お題を「ちょっと悲しかったこと」に切り替えると、急に教室がざわざわし始めたという。「朝のトーストが焦げちゃった」「あー、あるある」「トースト、焼く派? 焼かない派?」「うちは朝、ごはん食べてる」。ここでチャイムが鳴って終了した。結論はいらない。
 この活動はいじめをなくす学年の取り組みとして始まった。2年前「いじめゼロサミット」と題する教師、地域、PTA、生徒会が集まる会議で、いじめのない学年にするために、皆が前向きにコミュニケーションがとれる方法はないのか考えた。コミュニケーションをよくするため、クラス内で会話をする機会を設けようと提案したのは、当時中学1年だった現生徒会長の3年、大島和花さん(15)だった。

◇言葉ではなく絵でしりとりをする「絵しりとり」が人気

 班ごとに集まってふだん話をしない人を交えて話をすれば、相手のことを理解でき、何かあった時にも相談する相手ができるのでは。大島さんら同じ学年の4人で話し合い、活動内容を考えてシェアコミと命名した。週1回、朝の読書時間の10分間を使わせてほしいと校長に頼み、快諾を得た。
 2016年12月、初回を実施した。テーマは今年4月と同じ「最近あったちょっといいこと」。毎回テーマを考えるのが大変で、4人が知恵を絞る。昨年11月はアンケートを取ってテーマを募集した。これまでに盛り上がったテーマは、「サンタさんは本当にいるのか」「一番記憶に残っている夢」など。運営する4人の1人で副会長の3年、赤井里音さん(14)によると、「サンタさん~」は昨年、テーマがクリスマスだった際に出た話題だが、「見てはいけない現場を見た時、どうしたか」で非常に話が弾んだという。また、ゲームをやると笑いが起きて場がなごむ。紙に絵を描き、その紙を回して言葉ではなく絵でしりとりをする「絵しりとり」はとても盛り上がった。絵しりとりは今も人気で、休み時間にやったり、学級日誌の隅っこに描きつないだりするクラスもある。

◇もっと仲よくなれる土壌作り

 1年半あまりシェアコミを続けて、何が変わったのか。4人に聞くと、「クラスでペア化(仲のいい2人が固まって行動すること)が緩んで、他の人とも話す」「グループ化が崩れて最初からクラスの仲がいい」。「ふだん話をしない人ともすっと話せる」などが挙がった。「新しいクラスですぐに友達ができた」という同級生もいた。中学3年の黒川晴央教諭(42)と猪俣博史教諭(35)は、「すごく落ち着いている学年」「人間関係の大きなトラブルがない」と口をそろえる。生徒も教師も「いじめはない」と言う。
 だが、大島さんらは満足していない。学年代表の3年、堀卓馬さん(15)は「いいコミュニケーションはとれるが、ゴールが見えない。形だけでやっている感じ」。副会長の3年、天野涼太郎さん(14)は「いじめが芽生えるのを抑えるまでいかないと。一歩進化させたいと去年からずっと考えている」。大島さんは「相談できる相手がつくれる方向に向かっているのか。効果が目に見えないので、このままでいいのか不安になる。新しいことをした方がいいんじゃないか」と悩む。
 シェアコミをしているのは3年生だけだ。2年生は1年生の最後に試み、中断した。1年生はやり方を聞きに来た段階。続けていることは貴重な実践だ。シェアコミを快諾した前校長で、武蔵大学の賞雅技子(たかまさ・あやこ)客員教授(61)は「いじめをなくそう、やめようでは、マイナスのことがらをゼロにしかできない。いじめから離れて、もっと仲よくなれる土壌を作る。その土壌を作るのがシェアコミで、続いているのは聞いてくれる居心地のよさがあるからでは。運営する生徒たちが悩むシェアコミの今後をどうするか自体を、シェアコミのテーマにして皆で考えればどうか」と提案する。


質問 あなたが学校や職場でシェアコミをするとしたら、何をテーマにしますか。コメントしてください。