ソーシャルアクションラボ

2020.04.09

水害の記憶を継承 福知山治水記念館

※この記事は2019年9月17日付け毎日新聞朝刊に掲載されたものです 

 明智光秀の築城で知られる京都府福知山市の市街地は、同府北部を流れる1級河川・由良(ゆら)川の氾濫に長年悩まされてきた。そんな水害の記憶を継承するのが、川沿いにある福知山市治水記念館だ。

 明治期の町家を改修した施設の内部には、浸水の跡が残るふすまなどが展示されている。案内係の方が「これで荷物を運びました」と教えてくれたのが滑車。水害時に吹き抜けの空間を利用して、家財道具を2階の上の屋根裏まで引き上げる工夫という。1953年には台風による大雨で堤防が決壊、町は水没し、住民は屋根の上に避難した。屋外には過去の主な水害の最高水位を表示した棒状のモニュメントが建てられ、当時、水位が7.8㍍まで達した増水の恐ろしさを実感できる。

 市内には水害を防ぐための安全祈願が執り行われる堤防神社もあり、毎年8月には堤防への感謝をささげる「堤防まつり」がある。近年各地で相次ぐ大規模な水害。後世に戒めを語り継ぐ施設は、ますます必要となるのかもしれない。【大森顕浩】