ソーシャルアクションラボ

2020.04.09

避難行動要支援者名簿 掲載者割合で自治体間に200倍の差

*この記事は2019年6月19日毎日新聞朝刊に掲載されたものです。

「避難行動要支援者名簿」の掲載基準や運用方法 自治体間で大きな差

災害時 自力避難が困難な高齢者や障害者らの安否確認に使用

 災害時に自力避難が困難な高齢者や障害者らの安否確認に使われる「避難行動要支援者名簿」の掲載基準や運用方法に、自治体間で大きな差が生じている。2011年の東日本大震災を機に、市町村へ作成が義務付けられたが、毎日新聞が総務省消防庁のデータ(18年6月現在)を基に取材した結果、都市部の政令市に限っても人口に占める掲載者の割合は0.1~19.1%と最大で約200倍の開きがあった。高齢化や単身世帯の増加で、安否確認のあり方の模索が続いている。【真野敏幸】 

名簿掲載者の割合 約200倍の開き

 名簿には、氏名や連絡先、支援が必要な理由などを記載。内閣府は指針で掲載の目安を「要介護度3~5」や「身体障害者手帳1、2級」などと示すが、地域の実情に合わせるため、市町村の裁量を認めている。単身高齢者や緊急通報システムの利用者を加えたり、地理的要件で対象を絞ったりしているところもある。

主な政令市の避難行動要支援者名簿掲載者数

 人口に占める掲載者の割合が19.1%(約13万5000人)と20政令市中最高の静岡市は、国の目安に加え、65歳以上のみの世帯や乳幼児が3人以上いる世帯主なども掲載、市民の5人に1人が要支援者となる計算だ。災害時には、名簿を使い、民生委員や町内会が安否確認や避難誘導を行うが、担い手不足は否めず、支援の度合いに応じて名簿に優先順位を付けるなど、運用を地域に委ねている。

北九州市「真に必要な人のみ」 政令市中最低の0.1%

 一方、0.1%と政令市中最低だった北九州市の名簿掲載者は、人口約96万人中561人。国の目安を踏まえた上で、土砂災害の危険がある地域や浸水想定区域に住む人など、より緊急性の高い人の中から、マンションなど堅固な建物の2階以上に住む人や健常者が同居するケースを除くなど、極めて限定している。市の担当者は「現行の枠組みは、年齢人口の偏りから地域への負担が非常に大きい。共助にも限界があり、真に助けが必要な方を絞り込んでいる」と説明する。

 昨年6月の大阪北部地震で最大震度6弱を記録した大阪市の割合は、5.5%(約14万7000人)。発生直後から、民生委員らが名簿で安否確認を進めたが、区によって対応が割れた。職員も動員し、全掲載者の確認を試みた区もあれば、範囲を民生委員に委ねた区もあった。ある民生委員の男性は「我々だけで即時に安否確認するのは不可能だった」と振り返る。

 結果的に、市は「連絡が取れない人がいる」との情報がないことをもって安否確認が完了したと判断した。市の担当者は「要支援者の数が多く、地域事情も異なる。一律の基準を作ってもその通りにできるかは難しい」とこぼす。

 自治体間で名簿の掲載基準や運用方法にばらつきが生じていることについて、内閣府の担当者は「対応に差が出ることは想定内だが、優良事例を精査し、ノウハウを共有することで実効性を高めたい」と話した。

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 ■ことば

 ◇避難行動要支援者名簿

 2011年の東日本大震災で、死者の約6割を65歳以上の高齢者が占め、障害者の死亡率が被災住民全体の約2倍に上った教訓を踏まえ、14年に市町村による作成が義務化された。自力避難が難しい高齢者や障害者の氏名、住所、連絡先、支援が必要な理由などを記載する。掲載基準は各自治体に任されているが、要介護度や身体障害者手帳の等級などで決めているケースが多い。災害発生時には名簿に掲載された本人の同意がなくても支援する側に提供できるが、平時は本人の同意が必要。