ソーシャルアクションラボ

2020.04.20

スマホで全国ハザードマップ 開発した奈良大生が無料公開

※この記事は2019年2月17日毎日新聞朝刊に掲載されたものです。

 水害や土砂災害などの起こる範囲を予想した被害予測地図「ハザードマップ」。全国の市区町村のホームページ等で公開しています。自分の住むエリア、会社や学校など自分のよく行くエリアのハザードマップを一度は確認しておきたいですね。奈良大の学生が市区町村別に別れているハザードマップを一目で確認できるシステムを開発して、無償で公開しています。

<いのちを守る>

 スマートフォンやタブレット端末などで全国各地のハザードマップを手軽に閲覧できるシステムを奈良大4年の時枝稜(ときえだりょう)さん(22)が製作し、無料で公開している。自治体ごとにまちまちだった土砂災害や水害の危険箇所の表記を統一し、避難所の情報も盛り込んだ。「身近で起こりうる災害を知り、いざという時の行動に役立てて」と利用を呼び掛けている。

全国のハザードマップを手軽に見られるシステム「SONIC」を作った奈良大4年の時枝稜さん=奈良市で、阿部周一撮影

 ハザードマップは市区町村が作成するが、ある自治体のマップを手に入れても、異なる自治体の分は別途入手する必要がある。その上、自治体によって表示する情報や危険度に応じた色分けの仕方も異なる。

 時枝さんが作った新システム「SONIC」は、既存の地図ソフト上に土砂災害警戒区域や避難施設の位置を示した他、河川氾濫時の浸水想定区域を水深別に5段階で色分けし、画面を動かせば全国各地の情報を一目で確認できるようにした。

 さらに、都市圏で見つかっている活断層の地図や、南海トラフ巨大地震で予想される各地の最大震度を表示する地図も作製した。南海トラフ地震の予測地図は、画面中央の円でのぞき込む仕掛けを取り入れ、思わず操作したくなるように工夫されている。

 さまざまな情報を盛り込んだ電子地図は「地理情報システム」(GIS)と呼ばれ、2022年度から必修化される高校の「地理総合」で全国の生徒が学ぶ。SONICは、新年度から古里・大分県の小学校教諭に内定している時枝さんが「GIS教育に適した教材を」と発案し、卒業研究の一環で仕上げた。時枝さんの卒業後は、同大文学部地理学科の後輩たちが更新作業を引き継ぐ。

 時枝さんは「近年、自然災害が頻発し、防災への関心が高まっている。災害が起きた時にどう避難するかを事前に考え、身の安全を守るために使ってほしい」と話している。

 SONICには同大ホームページや専用のQRコードからアクセスできる。【阿部周一】