ソーシャルアクションラボ

2020.06.11

大災害時の避難所 感染症対策どうする?

1回目の最大震度7を観測した熊本地震の前震翌日、熊本県益城町の避難所で過ごす住民ら=同町で2016年4月15日

今、災害が起きたら……

国の避難所確保通知に自治体「既に危機的状況」

 新型コロナウイルスが猛威を振るう今、水害などの大災害が起きたら自治体は避難所の感染症対策をどうすればいいのか。国は今月、避難所でも「3密(密閉、密集、密接)」を避けるため、ホテルや旅館を活用してできるだけ多くの避難所を確保しておくなど事前対策を求める通知を出したが、眼前のコロナ対応に追われる自治体の現場からは「正直、それどころではない」と悲鳴が上がる。専門家は「自治体任せにせず国主導で考えるべきだ」と指摘する。


 避難所は災害対策基本法に基づいて東京23区や市町村が開設する。ひとまず危険から逃れるため逃げ込む「指定緊急避難場所」と一定期間滞在できる「指定避難所」に大別される。


 学校や体育館、公民館が指定されることが多い指定避難所は大規模災害が起きると避難者が押し寄せて過密状態になり、体力が低下した高齢者などを中心にインフルエンザやノロウイルスといった感染症が広がるケースが少なくない。


 国は4月出した通知で通常の災害時よりできるだけ多くの避難所を開設し、ホテルや旅館なども活用するよう求めた。避難者にせきや発熱などの症状が出た時は個室スペースと専用トイレを確保し、動線も別にするよう指摘。新型コロナウイルスに感染して自宅療養している軽症者の避難場所や避難所で感染者が出た時の対応も事前に検討しておくよう求めている。


 既に多くの感染者が出ている自治体の担当者は頭を抱えている。東京都総務局は「今まさに危機的状況に直面しているところだ」とコロナ対応に追われている。大阪府災害対策課は「感染者だけ分けて避難させるなんてことが大規模災害のさなかにできるのか」と漏らす。


 福岡県消防防災指導課は「ホテルや旅館を使った後、災害救助法の指定を受けられなかったら地元市町村が費用負担するのか」。福岡市地域防災課は「今災害が起きたら感染の不安から車中泊が増えるのでは」と危機感を募らせる。


 4月14日で熊本地震から4年になった熊本県の担当者も「すぐ対策を取るのは難しい。山間部や過疎地は公民館ぐらいしかない」と悩む。


 熊本地震では観測史上初めて最大震度7の激震を2度経験し、発生直後は18万人余りが県内の避難所に身を寄せた。全ての住宅の約6割が全半壊した同県益城町では町内10カ所に約1万6000人が滞在。過密状態になりロビーや玄関口まで人があふれた。熊本、大分両県の犠牲者は家屋倒壊などによる直接死50人に加えて震災関連死が220人に上り、一因に厳しい避難所の生活環境が挙げられた。


 東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)は「コロナ対応に追われる自治体に災害対策まで考えろというのは無理筋だ。国が主導して複合的対策を講じておくべきだ」と指摘する。【城島勇人、平塚雄太、森健太郎】

*この記事は2020年4月20日付 毎日新聞西部本社版朝刊に掲載されたものです。