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2023.03.01

電力の9割脱炭素化「35年までに可能」 京大や米研究所が分析

 日本は2035年までに、電力部門の9割の脱炭素化と安定供給が両立できるとの分析結果を、米ローレンス・バークリー国立研究所や京都大などの研究チームが発表した。再生可能エネルギーや蓄電池の価格低下が見込まれるためだが、チームは実現には再生エネの導入と石炭火力発電の廃止を加速させる政策が必要だと指摘する。

 50年の脱炭素実現に向けて、主要7カ国首脳会議(G7サミット)は22年6月、35年までに電力部門の大部分を脱炭素化することで合意した。日本政府は電力発電量に占める非化石燃料(再生エネ、原子力)の比率を19年度の24%から30年度に59%に引き上げる計画を掲げるが、35年の目標は示していない。

カーボンプライシングで石炭廃止加速

 チームは日本での非化石燃料9割の実現可能性を分析。30年度までに既存の計画を達成したうえで、35年時点で最もコストが低くなるような電源の組み合わせをコンピューターシミュレーションで調べた。

 石炭など火力発電は再生エネよりもコスト高となり、化石燃料から再生エネへの移行が加速。35年の電源比率は太陽光と風力を中心とした再生エネが7割、原子力が2割との結果になった。全体の電力コストは20年比6%減、電力部門の二酸化炭素(CO2)は同比92%減るという。

 電力需要に対して再生エネによる発電量が少ない時には揚水式の水力発電や液化天然ガス(LNG)火力発電を活用したり、他地域から融通したりすることと仮定。分析では、石炭火力を使い続けたりLNG火力を新設したりしなくても、蓄電池を約30ギガワット規模で導入、地域間の連系線を11・8ギガワット分新設できれば安定供給は可能だとしている。

 非化石燃料9割に向け、石炭火力段階的廃止のカギを握る政策が「カーボンプライシング(炭素の価格付け)」だ。チームによると、現在は地球温暖化対策税でCO21トン当たり289円が課されているが、価格の水準を35年までに6000円に引き上げれば石炭火力の採算が取れなくなり、99%が廃止すると見込まれるという。

 ローレンス・バークリー国立研究所の白石賢司研究員は「化石燃料価格の高騰と、再生エネや蓄電池の価格低下で、再生エネの導入は加速する。電力料金は低下し、エネルギーの自給率も向上するのでメリットは大きい。他部門に先んじて電力の脱炭素化を進めることが重要だ」と指摘する。

 分析結果をまとめた報告書は研究所のウェブサイト(https://emp.lbl.gov/publications/2035-japan-report-plummeting-costs)からダウンロードできる。【岡田英】

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