ソーシャルアクションラボ

2023.03.04

日本で越冬期過ごす鳥、451種 30年ぶり調査で分かった変化とは

 凍らない湖に、積もらない雪――。日本でもこうした地球温暖化の影響が見られるが、それに伴って越冬期(12~2月)を過ごす鳥たちに変化が起きているという。約30年ぶりに実施された調査から浮かび上がった結果とは。

 この調査は「全国鳥類越冬分布調査」。日本野鳥の会(東京都)などが事務局を担っている。

 調査では愛鳥家に、どの種がいつどこにいたのかといったバードウオッチングなどを通じて得た情報を、アンケートで尋ねた。2016年1月~22年2月に全国の396人が計10万5660件の回答を寄せた。

 加えて、民間の団体がこの期間に集めた78万8148件の観察データも用いて、各種の生息地を明らかにした。

 調査報告によると、越冬期に日本で過ごすのは451種いることが判明した。このうち309種の分布図も作成することができた。

 同じような調査は1984~86年、当時の環境庁が実施したことがある。その結果と比べると、温暖化に伴う変化が明らかになったという。

 ここ30年間で分布を広げたのは、ツバメなど主に夏鳥として冬場は海外に渡る鳥だ。空中で虫を捕るため、国内では虫が減る冬場は生息に適さなかった。

 ところが、ツバメやイワツバメ、ヒメアマツバメ、サンショウクイの4種が冬場にも観察されるようになった。平地が雪に覆われにくくなり、餌に困らなくなった日本で越冬できる範囲を広げた可能性があるという。ツバメは東北地方の太平洋側でも見られるようになり、日本の秋から冬にかけて繁殖する例も確認された。

 一方、アオサギやカンムリカイツブリ、オオバン、ヒドリガモなどの水鳥も、北へと生息地を広げていた。湖や沼が凍らなくなり、冬場でも餌を取ったり休息したりすることができるようになったからだ。

 北海道で観察されていたカンムリカイツブリは30年前、道内を40キロ四方の地域で区切ると4カ所でしか生息が確認されなかった。今回の調査では27カ所で観察された。

 コクマルガラスやミヤマガラスなど、開けた土地で種子などを食べる鳥も生息地を北に広げ、北海道や東北地方でも見られるようになっていた。草地が雪に覆われず、冬でも種子が食べやすいことが影響しているようだ。

 ただ、森林内で餌を取る鳥や海鳥、猛きん類ではこうした「北進」の傾向がなかった。元々、積雪に強く、餌を取るうえで森林内は雪の量による影響を受けにくい面があるためだ。

 気象庁気象研究所や環境省によると、温暖化の影響のため国内の積雪量は北陸地方の内陸部を除き、減少傾向だという。秋田県の八郎湖では冬場になると湖面が凍り氷上でワカサギ釣りができたが、近年は凍らない年が増えている。

 調査の事務局を務めたNPO法人「バードリサーチ」(東京都)の植田睦之(むつゆき)代表は「北に分布が広がる種によって、過去にはない農業被害などが起きている可能性がある」と強調する。その上で「今回の調査では、生息する個体数までは把握できていない。分布の拡大と、個体数の増加が一致しているのか、していないのか、さらなる調査が必要だ」と話した。【渡辺諒】

関連記事