2023.03.14
障害者の意見を災害伝達に生かす 気象台と大学が協定
東京管区気象台、水戸地方気象台、筑波技術大(茨城県つくば市)は13日、障害のある学生らの意見を生かして防災対策を進めるための協定を結んだ。旗を使って聴覚障害者に津波の危険を伝える「津波フラッグ」の模様を決める際に、同大の聴覚障害者の学生らが評価に協力した実績がある。協定締結で、こうした意見をさらに反映させていく狙いだ。
港区の気象庁で開かれた協定締結式には、多田英夫・東京管区気象台長、三井秀夫・水戸地方気象台長、石原保志・筑波技術大学長が参加。障害者ら要配慮者の防災対策など5項目での連携を確認した。
東日本大震災では、津波警報の伝達に行政の防災無線などが使われたが、耳の聞こえない人にどう伝えるかが課題になった。気象庁は視覚的に警報を伝える「津波フラッグ」を検討。2020年に、国際信号旗の一種で危険を意味する赤白の格子模様の「U旗」と同じデザインにすることを決めた。
デザインの決定に先立ち、気象庁は19年11月に横浜市の海岸で実証実験をした。筑波技術大の教員や聴覚障害のある学生が参加。ライフセーバーの振る複数の旗の中から、学生が「U旗が見やすい」と意見を述べて、採用された。
石原学長は「障害を人に隠したいと思う学生もいるが、社会に出ると自分で障害を説明しなければならない場面もある。津波フラッグでは、意見が社会や環境の改善に役に立つことを実感し、学生にとって自信になった。公的機関で障害者の意見が採用されれば、企業などで働く人の意識も変わるのではないか」と期待する。
筑波技術大と気象庁は、意見交換や都立葛飾ろう学校での講義にも取り組んでいる。昨年夏には、気象庁が災害発生時に行う記者会見について話し合った。意見交換に参加した同大の井上征矢教授によると、学生からは「手話を理解していない聴覚障害者もいるので、字幕を付けてほしい」などの声が寄せられたという。
井上教授は「すぐに反映してもらった項目もあり、学生からうれしいという声があった。さらに連携を深めていきたい」と語った。【安藤いく子】
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