ソーシャルアクションラボ

2023.03.15

「難民鎖国」日本、同性愛迫害での認定わずか3件 入管の問題点は

 帰国すれば同性愛を理由に迫害の恐れがあるとして、アフリカ東部のウガンダから日本に逃れた30代女性が国に難民認定を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(森鍵<もりかぎ>一裁判長)は15日、女性を難民と認め、国外への強制退去とした国の処分を取り消した。ウガンダは同性愛者への差別的意識が強いとして、「恣意(しい)的な身体拘束の可能性がある」と判断した。

 性的少数者(LGBTQなど)であるがゆえに理不尽な迫害を受け、母国を逃れる人は少なくない。ただ、日本で難民に認定されるハードルは高い。

 NGOの国際レズビアン・ゲイ協会(ILGA、本部・スイス)によると、同性間の性行為を犯罪としている国はアフリカや中東などで70カ国(2020年12月現在)あり、ウガンダも含まれている。

 出入国在留管理庁によると、過去に同性愛への迫害を理由に日本で難民認定された例は少なくとも3件ある。親族から不名誉だとして発砲されたなどという事例は紹介されているが、国籍や性別は明らかにされていない。

 日本はそもそも「難民鎖国」と呼ばれ、難民の認定率が先進国の中でも異例の低さになっている。21年に難民と認められたのは74人で、その割合は1%にも満たない。

 「再び迫害を受けるかもしれない渡航先でカミングアウトする怖さもある」。難民と認められたウガンダ人女性の代理人を務める川崎真陽(まや)弁護士(大阪弁護士会)は、性的少数者特有の難しさをこう指摘する。母国での偏見や差別が強く、家族らから協力を得られず、証明が難航する場合もある。

 政府は今国会に入管法改正案を提出し、外国人の長期収容の解消を目指す動きも見せる。難民申請を事実上2回までに制限する内容も含まれ、「人権軽視」と批判する声もある。

 川崎弁護士は「今回の判決が同じような立場の人に光が当たるきっかけになってほしい」と期待した。

  中央大の北村泰三名誉教授(国際人権法)は「罰則のある国から逃れてきた性的少数者の権利を保護するのは国際的な潮流だ」と指摘。「入管は今回の判決を踏まえ、母国の情勢や当事者の立場を考慮した、より慎重な審査が求められている」と語った。【山本康介、古川幸奈】

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