2023.03.20
温室効果ガス、2035年までに6割削減が必要 国連IPCC報告書
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は20日、地球温暖化を巡る最新の研究結果をまとめた第6次統合報告書を公表した。世界の平均気温の産業革命前からの上昇幅を1・5度に抑えるには温室効果ガス排出量を2035年までに19年比で6割減らす必要があるとしている。
今後各国で35年以降の削減目標の検討が本格化するが、報告書の知見が議論に影響を与えそうだ。
統合報告書によると、11~20年の気温は産業革命前から1・1度上昇しており、排出削減を進めても30年代前半に1・5度に達する可能性が高い。それ以上の上昇を止めるには19年比で35年までに60%、40年までに69%削減する必要がある。石炭火力発電所など排出削減対策を講じていない既存の化石燃料のインフラを使い続けると、1・5度にとどめるために許される累積排出量を超えるという。
また、人間活動が原因の温暖化は海面上昇や洪水、熱波、干ばつといった異常気象を招き、悪影響が広範囲に拡大。途上国など被害を受けやすい地域に約33億~36億人が暮らしているという。被害を減らす「適応策」が拡大しているが、既に適応の限界に達している地域もある。
統合報告書は「持続可能な未来を確保する機会の窓は急速に閉じつつある」と指摘。「今後10年間の選択と行動が何千年にわたり影響を与える」とし、排出削減や適応策を加速させることは大気汚染の改善など複数の分野でメリットがあると強調した。
統合報告書の公表は9年ぶり。21、22年に公表された三つの作業部会の報告書を基に、世界の専門家93人が温暖化の影響や被害軽減策、温室効果ガス排出削減の道筋など、分野横断的に最新の知見をまとめた。【岡田英】
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