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2023.03.31

生物多様性の回復へ、25の行動目標 10年半ぶり国家戦略改定

 政府は31日、損失が続く生態系を2030年までに回復に転じさせることを目指す「生物多様性国家戦略」を閣議決定した。戦略改定は10年半ぶり。民有地の活用などによって、陸、海の30%以上を保全することなど25の行動目標を設定した。

 カナダで22年12月に開かれた国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、30年までの実現を目指す国際目標「昆明・モントリオール目標」を採択した。今回の戦略は、国際目標達成に向けて、日本として取り組む政策をまとめたものになる。

 戦略によると、行動目標のうち「30by30(サーティー・バイ・サーティー)」と呼ばれる30%保全目標の実現のために、国立・国定公園の面積を新規指定や拡張で増やし、国立公園の中の海域公園は5・5万ヘクタールから11万ヘクタールに倍増させる。また、企業などが管理し、生態系が保全されている土地を「自然共生サイト」として認定し、一部を目標達成に算定する。

 企業に対して、森林破壊など生物多様性に及ぼす影響を評価し、情報を開示することを促す目標も初めて盛り込んだ。世界の機関投資家らが参加する国際組織「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」が今年9月に、評価や開示の枠組みを正式決定する予定で、政府は情報開示を支援し、TNFDに賛同する企業・団体数を増加させる方針。

 戦略では他に、侵略的外来種の定着率を半減▽食品ロス半減▽生物多様性に有害な補助金を特定して見直す――といった行動目標も掲げた。目標達成のために進捗(しんちょく)を測る指標も設定。2年に1回進捗を確認し、国内外の動向に応じて政策を見直すという。

 西村明宏環境相は31日の閣議後記者会見で「生物多様性は人類存続の基盤だが、気候変動に比べて認知度は低い。戦略を広く浸透させて、国民の具体的な行動につなげていくことが重要だ」と話した。【岡田英】

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