ソーシャルアクションラボ

2023.04.23

60カ国の人が暮らす多文化の街 分断・貧困に挑む「集いの場」

 住民の5人に1人が外国籍の人が暮らす大阪市生野区。コリアンタウンなど観光地としても人気を集める地域に5月、多文化共生をテーマにした施設「いくのコーライブズパーク(略称・いくのパーク)」がグランドオープンする。閉校した小学校を活用し、子どもたちの学びの場や市民農園、飲食店などさまざまな機能を持つ。企業と共同で運営するNPO法人「IKUNO・多文化ふらっと」事務局長の宋悟さんは「誰もが暮らしやすい全国一のグローバルタウンをつくりたい」と話す。【まとめ・松室花実】

 生野区には元々、戦前日本の植民地だった朝鮮半島にルーツを持つ在日コリアンが多くいました。しかし、近年はベトナムや中国などさまざまな国の人が増えて、約60カ国の人が暮らしています。

 多くの文化が集まる魅力的な街ですが、課題もあります。子どもの貧困化が進んでいて、経済状況が厳しい家庭に給食費などを補助する就学援助率は全国平均の2倍以上です。日本語に慣れない人も多く、災害時や子育てなどにおいて孤立してしまうケースもあります。

 そこで私たちは多国籍・多文化だからこそ抱える課題を解決しようと、「新たな拠点」をつくりました。現在、区内では少子化の影響で小学校再編計画が進められていて、2021年にはその第1校目として大阪市立御幸森小学校が閉校しました。跡地の活用には公募があり、食を通じたまちづくりに取り組む「株式会社RETOWN」と共同で提案した「いくのパーク」事業が採択されました。

小学校跡地で学習支援、市民農園

 22年4月からさまざまな機能が順次オープンしています。校舎の音楽室だった場所では小学生から高校生を対象にした学習サポート教室を開き、日本語学習や学校の授業、受験のサポートを大学生や社会人の講師が個別指導しています。また、普段は生活圏が狭い子供たちにさまざまな世界を知ってもらうため、大学のキャンパス見学や自然体験活動なども企画しています。

 図書室だった場所は、違いの豊かさや人権を学ぶ機会にしてもらうため、多様な絵本や書籍をそろえ、子育てに関する相談も受け付けています。

 食を通じたつながりも大きなテーマです。校庭の一角を整備した市民農園は、無農薬の野菜の栽培や収穫が体験できる場となっています。多目的室では週に1度子ども食堂を開き、農園で収穫した野菜を使った料理も提供します。また、プールをリノベーションした屋上にはバーベキューができるスペースやバー、保健室だった場所には喫茶などさまざまな飲食店も開業予定です。

 その他、スポーツやアートの体験スペース、クラフトビールの醸造所など多様なテナントが入居する他、地域の防災拠点としての役割も果たします。

 私たちが目指す多文化共生とは、国籍や民族の違いだけでなく、世代や性別、障害の有無などあらゆる面で多様性を認め合い、共存することです。現在の日本社会はさまざまな場面で競争が繰り広げられ、自己責任という考えが主流になっています。それによって分断や格差が広がり、取りこぼされていく人々がたくさんいます。

 そんな中、多様性を認めて共存する理由は単にマイノリティーのためだけではありません。未来に必要な新しい価値や社会の仕組みを生み出すために、マジョリティーの側にとっても必要なことなのです。

 今、生野区が直面している課題は今後、日本各地の都市が抱えるものだと感じています。いくのパークが挑戦する多文化共生のまちづくりが発端となり、誰もがありのままでいられる社会が全国や世界にも広がってほしいと思っています。

IKUNO・多文化ふらっと

 大阪市生野区桃谷5の5の37 いくのコーライブズパーク2階。いくのパークは5月3日にグランドオープン。オープニングイベントとして3~5日にはさまざまな国の料理を屋台で楽しめる「いくの万国夜市」が開かれる。午前11時(3日のみ11時半)~午後9時、入場無料。電話06・6741・1123。

関連記事