ソーシャルアクションラボ

2023.04.25

LGBT法案「与党案として国会提出」浮上 G7まで「時間わずか」

 LGBTQなど性的少数者への理解増進を目的とする議員立法「LGBT理解増進法案」をめぐり、自民・公明両党が与野党間の合意形成を待たずに「与党案」として国会提出する案が浮上していることが分かった。自民幹部が明らかにした。5月19日開幕の主要7カ国(G7)首脳会議前の成立を期す狙いだが、野党側の反発が予想され実現の可能性は不透明だ。

 自民幹部は、「理解増進法ではなく、差別禁止法が必要だ」といった当事者団体の声を受け、野党がより規範性の高い内容を求めた場合に与野党間の意見集約が困難になると指摘。「首脳会議まで残された時間はわずかで、踏み込んだ内容にはできない」と述べた。

 さらに、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を受け、昨年の臨時国会で成立した不当寄付勧誘防止法の成立過程を例に挙げて「与党主導で野党が反対しづらい環境を作ることが必要だ」と語った。同法をめぐっては、与党が政府提出法案の修正協議を主導し、立憲民主党など野党は「内容が不十分だ」としながらも被害者救済を優先するとして法案に賛成した。

 ただし、超党派議員連盟が2021年にまとめた理解増進法案は、自民党内の保守系議員の反対で国会提出が見送られた経緯がある。これまで成立の障壁となってきた自民が与野党間の合意形成をせずに法案を国会提出すれば、野党からの反発は必至だ。また自民党内には法案の「差別は許されない」との文言に反対する声が根強く、党内の意見集約も見通せていない。

 岸田文雄首相は25日、公明党の山口那津男代表と首相官邸で会談。G7首脳会議前の理解増進法案成立を改めて求めた山口氏に対し「公明党の主張を踏まえて対応する」と述べ、G7前成立に理解を示した。一方、自民党は同日、「性的マイノリティに関する特命委員会」を党本部で開き、理解増進法案に関する議論を開始した。28日から条文案の検討に入る。【小田中大、藤渕志保】

関連記事