2023.05.02
CO2排出実質ゼロのタイヤを量産、日本初 住友ゴム工業が独自工法
住友ゴム工業(神戸市)が日本で初めて、白河工場(福島県白河市)で二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロに抑えるタイヤ量産製造に成功した。生産工程に欠かせない熱発生源のエネルギーを天然ガスから水素に転換させた独自工法を採用し、脱炭素の意識が高い欧州の乗用車向けに出荷を始めている。同社はカーボンニュートラル(二酸化炭素排出実質ゼロ)の実現に向け、2035年までに国内全工場での導入を目指す。
一般的にタイヤを造る際は、ゴムに硫黄を混ぜた上で、約200度の水蒸気を浴びせて強度を増すための化学反応を引き起こさせ、さらに型に流し入れて電力でプレスし、表面に「溝」を刻み込む作業があるという。
日本自動車タイヤ協会によると「標準的な低燃費タイヤ」1本を造るに当たって排出される温室効果ガスは、二酸化炭素に換算して6・6キロ。住友ゴムはこの工程で、ガスに代わって水素を燃やす技術を導入した。電力も自社の太陽光パネル発電で賄うため、二酸化炭素の排出削減量を年1000トンと試算。白河では30年までに、国内向け乗用車やバス、トラック用タイヤも全て水素で製造する。
山本悟社長は、4月19日に同工場であった式典で「水素を利用した高精度の工程で、カーボンニュートラルに一歩を踏み出した」と述べ、35年までに国内の全工場で「白河モデル」を導入する計画を明らかにした。
白河工場で使う水素は浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド」など県内3カ所で生産されたものを圧縮し、トレーラーで運んで来る。「現状で、調達コストは天然ガスに比べて割高だが、水素エネルギーの普及に伴って低価格になり、液化して効率よく運搬することも可能」と同社担当者は見込む。
式典で内堀雅雄・福島県知事は「福島産の水素を福島の工場で消費する。太陽光発電も活用されるクリーンなタイヤは原発事故から12年の福島から世界に向けた素晴らしいメッセージだ」とあいさつした。【根本太一】
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