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2023.05.05

求む!サワラ目撃情報 山形で放流されたタグ付き個体を高知で発見

 「サワラをさがしています!」――。山形県水産研究所は、全国の釣り人に向けて、サワラの目撃情報の提供を呼びかけている。目印は、背びれに付けられた長さ約2センチの黄色いタグ。日本海側の山形で放流して1年半後に、太平洋側の高知県で見つかったケースもある。サワラの生態は謎が多く、同研究所は目撃情報を生態の解明につなげる。

第3章 北上する魚たち(番外編)

 サワラは体長1メートルに達する大型の魚で、刺し身や焼き魚などで親しまれている。かつては瀬戸内海が主な産地だったが、2000年代ごろから山形県や京都府など日本海側で漁獲量が急増し、こうした地域ではサワラ漁が地元漁業の一つの柱になった。日本海側で増えた理由は不明な点が多いが、海水温の上昇との関係が注目されている。

 「急に増えたので、いついなくなるかも分からない」と、同研究所や地元漁業者は13年度、網で捕獲したサワラの幼魚の背びれにタグを付けて放流し、回遊経路などの調査を始めた。サワラの動向が分かれば、資源保護の取り組みにつながるとの考えからだ。

 研究所によると、毎年秋に約500匹を放流。そのうち10匹程度が漁業者や釣り人らに捕獲され、研究所に報告があるという。当初は、新潟県や福井県など日本海側だけだったが、17年以降は岩手県や千葉県など太平洋側でも見つかるようになった。

 22年4月には、20年10月に放流したサワラが541日間の「旅」を経て太平洋側の高知県・室戸岬付近で見つかった。放流時は体長約50センチだったが、発見時は体長82センチ、重さ3・5キロにまで成長していた。

生態把握し資源保護に

 日本で取れるサワラは、東シナ海で生まれて日本海を回遊する「東シナ海系群」と、瀬戸内海で産卵・回遊する「瀬戸内海系群」に分類されている。しかし、山形で放流して千葉や高知など太平洋側で見つかったサワラは、津軽海峡を通過して太平洋を南下したとみられる。研究所の高木牧子主任専門研究員は「山形で取れるサワラは日本海側を回遊していると思っていたが、系群同士が交流している可能性もある」とし、「知見が集まれば、どの地域と連携して資源保護を進めればいいか分かる」と協力を呼びかける。

 標識タグは、ほかの調査で余ったものを利用しているので県名の記載はなく、標識番号のみが記されている。見つけた人は、標識番号、捕獲の年月日、場所、漁法、サイズを同研究所(0235・33・4382)まで。【柳楽未来】

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