ソーシャルアクションラボ

2023.05.10

畑の交流、実り多く 企業向け「農福連携」障害者と一緒に汗流し

 障害のある人が農業に携わる「農福連携」の場に、一般企業の社員向けの農業体験やワーケーションを組み合わせる試みが、北九州市内で動き出した。障害や職種の違いを越えた畑の交流で目指すものとは? 体験ツアーをのぞいた。【青木絵美】

 同市若松区で3月にあった3泊4日の体験ツアーには、東京や福岡のIT企業などから15人ほどが参加した。メインは、午前に農作業、午後に休息やテレワークなどで思い思いに過ごす2日間のプログラムだ。

互いに接する機会重要

 農園「ネイチャー」を訪れた参加者は、経営する天野克寛さん(47)の案内や説明でトマト狩りを楽しんだ後、農園が市民らに貸し出す体験農園の畝を整える作業を手伝った。作業の手本を見せたのは、天野さん夫妻が運営する就労支援の事業所で農作業に取り組む障害のある人たち。企業の参加者は、彼らと時折話しながら一緒に汗を流した。

 ツアーは、環境保全や社会課題に目配りした農福連携を目指す小倉北区の株式会社「北九州SDGsソーシャルファーム」が企画した。設立メンバーの一人で福岡県行橋市の飯塚誠さん(50)は、長女(20)に重い知的障害があり、自立支援の事業所に行っても、周囲とコミュニケーションが難しく通い続けられない「壁」に直面してきた。

 農福連携は、担い手不足が深刻な農業分野で、障害のある人たちが特性に合わせた作業を担えるとの期待も大きい。飯塚さんは、就労の定着に向け「障害のある人とそうでない人が、共同作業で互いに接する機会を増やすことが重要」と力を込める。

心身の健康に新事業を模索

 障害への理解に加え、企業の人たちに農作業で得られる癒やしを心身の健康に役立ててもらうのも狙いだ。ネイチャーの天野さんは「普段の仕事とは違う自然界の物差しに触れる活動なので、企業研修やカウンセリングの場にもなるのでは」と期待する。

 今後、ツアー参加者の意見も参考に、具体的な事業内容を構築する予定で、飯塚さんは「新たなインクルーシブ(包摂的)事業の仕組みを作りたい」と意気込んでいる。

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