2023.06.03
愛車も家も、褐色の水の中に 愛知・豊橋と豊川、冠水あちこちに
台風2号の影響による2日の記録的大雨から一夜明けた3日、線状降水帯が発生し、緊急安全確保が出された愛知県豊橋市や同県豊川市は市街地や農地が広範囲にわたって冠水していた。
豊橋市内を流れる豊川や両市の境を流れる豊川放水路の水は褐色に濁り、冠水した道路のいたるところで立ち往生した車両があった。豊川市小坂井町の国道1号と151号の交わる宮下交差点周辺もその一つ。近くの五社稲荷社前で、大鳥居の方向を見つめる人の姿があった。豊橋市の会社員、青木禎さん(52)だった。
青木さんは2日夕、国道151号を車で帰宅途中に被害にあった。座席シートの上まで水が入ってきたため、車を乗り捨てた。腰まで水につかりながら40分近くかけて自宅に戻ったという。一夜明け、愛車の様子を確認するため被災現場を再び訪れていた。
「水の中を歩くのがこれほど大変とは」と青木さん。道路の水はいまだ引かず、愛車の近くにも行けない。「これではねえ」と顔をしかめた。
豊川市内を流れる佐奈川と諏訪川の合流点近くの同市蔵子地区。薬局の駐車場の隅に、椅子やラック類などが並べられていた。駐車場には車も2台止まっていたが、薬局の青木紀季店長(37)は「車は流されてきたもの。(店舗に)ぶつかるんじゃないかと怖かった」と語った。
薬局に面した諏訪川があふれたのは2日午後6時半ごろ。青木さんは片付けをしていたが、あっという間に店に水が押し寄せてきた。自動ドアを閉めたが水が入り膝上まで来たため、裏の窓を割って外に逃げたという。
アパート1階自宅の片付けをしていた会社員の浜口拓也さん(31)は2日午後7時ごろ、異変を感じた。「床下から変な音がしたので見てみると、床下収納が浮いていた。ドアを開けたら膝下まで水が来た」。車で逃げたが途中で水没し、近くの缶詰工場に避難した。家の中は泥まみれ。「これからどうするか、ちょっと心配です」
「こういう水害は初めてで驚きしかない」。こう話すのは豊川市伊奈町の会社員、小久保綾子さん(36)。2日夕、母親(71)が小久保さんの家から約4キロ離れた蔵子地区の自宅に戻る途中に冠水して車が動かなくなったという。ドアも開けられず小久保さんに助けを求める電話があった。窓を開けて何とか外に出たが、水は胸の高さまであり、近所の人に背負われて逃げてきたという。「怖くてなかなか寝られなかった。市内には放置された車が山ほどある」と不安げに語った。【清藤天、川瀬慎一朗】
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