2023.06.14
レインボーカラー「隠して」 同性婚訴訟判決で福岡地裁が着用制限
福岡地裁で8日にあった同性婚を巡る訴訟の判決言い渡し前、多様性を象徴するレインボーカラー(虹色)の服飾品を傍聴席で着用しないよう地裁が求めていたことが、地裁や訴訟関係者への取材で判明した。地裁によると、上田洋幸裁判長が裁判所法71条(法廷の秩序維持)を根拠に指示した。靴下や腕時計バンドなどが制限された。原告側弁護団などは「見えない部分まで制限し、やり過ぎだ」と疑問を投げかけている。
裁判所法71条は、裁判長が法廷の秩序を維持するために必要な事項を命じ、処置を執ることができるとする。地裁は取材に対し、法廷では、はちまきやゼッケン、たすき、腕章などを着用した場合に入廷を禁止されることがあるとし、今回は「裁判長の指示により、(これに)類するレインボーカラーの装飾品のうち、裁判体(裁判官)や当事者が認識できるようなものの着用は許されていなかった」としている。
訴訟では、同性同士の結婚を認めていない現行制度は憲法に反するとして、同性カップルが国に損害賠償を求めた。上田裁判長は「違憲状態」と判断した。法廷では一般向けの傍聴席が72席あり、315人が傍聴券を求めて並んだ。
明治大法学部の鈴木賢教授は傍聴人として法廷に入ろうとした際、白い靴下に入っていた虹色のラインについて、地裁職員から「裁判体の指示で、隠さないと入れません」と言われたという。そのため、柄の部分を折り曲げて入廷した。地裁の建物に入る際の持ち物検査でも、虹色の文字で「LOVE&PEACE」と記されたストラップをかばんに付けていたところ、「隠してください」と言われたという。
鈴木教授は「靴下には文字が書かれているわけではないのに、規制するのは前代未聞だ。不当な制限で、不必要な萎縮効果を及ぼす」と批判した。
佐賀県にある、性的少数者の支援団体で共同代表を務める小林誠さん(56)も虹色で「PRIDE」と記されたTシャツを着用していたが、入廷を拒まれた。シャツを羽織って入ったが、今度は法廷内で、虹色のバンドを付けた腕時計も外すように言われたという。小林さんは「裁判所に声を聞いてもらい、国会を動かしてほしいと思って傍聴してきたが、それを裁判所に拒否されたと感じた。怖かった」と話した。
原告側弁護団事務局長の石田光史弁護士によると、弁護団も判決当日の朝、地裁書記官から虹色のバッジなどを法廷内で着用しないように求められた。これまでの弁論期日でこうした制限はなかった。石田弁護士は「(虹色は)同性婚実現を表すものではなく、直接的なメッセージでもない。目的も分からず、やり過ぎではないか」と話した。【志村一也】
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