ソーシャルアクションラボ

2023.06.17

ぼくは出張。「学童に行きたくない」むすこ、どうする?|せんさいなぼくは、小学生になれないの?⑫

⑫10日目 2022年4月22日

一夜明けて、朝。家族全員6時には目を覚ます。今日は、ぼくが出張の日。そのため、付き添いの必要なむすこ(長男)の登校の送りは妻に任せ、次男を保育園に送ることになった。

むすこ(長男)は機嫌はよさそうだが、「学校には行きたくない」と言っている。着替えをせず、朝ご飯まで2階の寝室のテレビで大好きな「おさるのジョージ」を見る。   テレビを見ているむすこに「今日は学童には行かなくていい」と妻が話をする。学校に行きたくないのは「放課後の学童に行きたくないから」とむすこが繰り返し主張していたからだ。

その代わり、今日の放課後は、近所の家でむすこが遊べるか聞いてみよう、と話す。

むすこは朝食を食べ、妻に着替えさせてもらう。

ご飯のあと、その近所の子が迎えに来て、インターホンを押した。むすこは、ふだん遊ばないおもちゃを段ボール箱に入れて遊び、行きしぶっていた。 近所の子が玄関を開ける。その子のお母さんもちょうど玄関に来ていたので、その場で妻が、「きょうは、放課後にむすこが遊びに行ってもいい?」と聞き、OKをとりつける。 それを見て、本当に学童に行かなくて済むとわかったむすこの顔は、絵に描いたようにパッと明るくなった。 そして、「今日は、(学校の近くの)橋の下でバイバイする」と言って、お母さんとすたすた出かけていった。   次男が後追いしそうになったので、「消防車を見に行こう」と声をかけて、妻の職場の裏側にある消防署に自転車で連れて行く。 消防士さんたちが、大きな消防車を洗っている。 「なんで、洗ってるの?」とむすこが聞く。 「大切な車だからじゃない?」   「なんでなんで?」が口癖の3歳間近。   保育園へ下の子を送るのは、久しぶりだった。園に着くと、まだ子どもがほとんどいない。次男は、入り口で自分で靴を脱いで、靴箱にしまう。その姿を見るのは初めてで、成長しているなあと、しみじみ。靴下も脱いで、たたもうとして、たためなくて、「お父さん、はい」と渡してくる。   保育室のドアを開け、先生たちに引き渡す。元気に手を振って別れた。   なんと楽な送りだろうか!

さあ、きょうは、これからぼくは出張。

しかし、明日もむすこがどうなるかわからないので、一泊するはずだった予定を切り上げて、日帰りにすることにした。 以下は、本日のむすこの登校の様子。 心の整理のために日記を書くことが妻にも伝染した。 ***** 初日。本日、夫は出張につき私が学校へむすこを送った。「朝から行きたくない・・・、学童嫌だ・・・」を繰り返すので、夫と話し、近所のママにあずかりをお願いする施策を練る。切り札ではあるので、それをいつどのタイミングでむすこに出すか・・・。先に出して安心させるべきか、それとも・・・。悩む。 むすこ「行きたくない……」 わたし「じゃあ、小学校はいいの?」 むすこ「うん・・・」(あんまりよくないけどまし、の顔) わたし「おっけ。じゃあ、今日は学童なしにしよう」 (顔が明るくなる。ここでカードだしたほうがよいか?!) 「でも、お母さんお仕事なんだよねー」 むすこ「嫌だ!!!」 わたし「じゃあ、帰ってきたら△△くんのおうちに行かせてもらう? 一緒に宿題して、遊んどく?」 むすこ「うん! 行く!」 わたし「おし。じゃあ、そうしよう」 あっさり交渉成立。 学童の連絡ノートはランドセルに入れないこと、 学校の連絡帳に「学童は行かない」と書いたこと、 本人の目の前で近所のママにあずかり依頼、 を見せて、なんとか出発。 「どこまでついていく?」というと、学校手前の橋の下でバイバイすると言う。今日は登校中も私の手を握ることもないので行けそうな予感。途中「学童ほんとうに行かない?今、電話してよ!」と確認され、「大丈夫だよ。ノートも持ってきてないし」と、連絡帳にも書いたことを再度確認。先生にも言っていいよと伝える。 すると安心したのか、じゃあね、と橋の下であっさりハイタッチ。 スタスタ門の中に消えていきました。 一進一退とはまさにこのこと。 大好きな給食が、いくらか登校へのモチベーションになったのかな。 学童に何か引っかかるものがあるのは間違いないので(まあ、私も若干いろいろ思うところはある……)、まずは不安要素を取り除き、対応をするしかないかなあ。別の選択肢も考えるか。

我が家の家族構成: むすこの父である筆者は執筆開始当時、41歳。本づくりや取材執筆活動を行っている。取材や打ち合わせがなければ自宅で働き、料理以外の家事を主に担当。妻は40歳。教育関係者。基本的には9時~17時に近い働き方をしていて、職場に出勤することが多い。小1のむすこのほかに、保育園に通うむすこもいる。

【書き手】末沢寧史。異文化理解を主なテーマとする、ノンフィクションライター、絵本作家。出版社勤務を経て独立。絵本作品に『海峡のまちのハリル』(小林豊・絵、三輪舎)。出版社どく社を仲間と実験中。妻は教育関係者。本連載では、むすこの小学校入学直後に直面した行きしぶりと不登校をきっかけに、子どもという「異文化」について記します。