ソーシャルアクションラボ

2023.06.23

荒れるむすこ「ぼくを見て欲しい」|せんさいなぼくは、小学生になれないの?⑭

⑭12日目 2022年4月25日

月曜日(4月25日)の今朝も、やはり「学校行きたくない」モードに。

土日は、家具職人さんの工房で、お手製のえんぴつを作らせてもらって息抜きしたり、市議の方がやっている子どもたちのためのフリースペースで過ごしたりした。

むすこは、土曜まではピリピリしていて、おそらく心身症で下痢にもなっていた。棒を振り回したり、自分に注目がないと叫んだり、とストレス状態が表面化していた。 職人さんの工房には、家具の相談に行った。前回来たときにもらったえんぴつの芯を削ってもらおうと、むすことは話していた。

ぼくと妻が、職人さんとテーブルを囲んで家具について打ち合わせをしているとき。

むすこはずっと、そのえんぴつですてきなテーブルをたたき続けて親のぼくと妻の興味をひこうと躍起になった。最終的には、妻とメジャーをつかって、いろんなもののサイズを測るというあそびをしていると、落ち着いていった。

どうやら「えんぴつが作りたくて、こういう行動に出ている」ことを説明すると、職人さんはさっそく作業場にむすこを連れて行き、ドローイングナイフという大工道具を「好きなだけ使っていい」と言って、木を削らせてくれた。そのときは、作業場にひとりでスタスタとついて行き、楽しそうにしていた。 職人さんとむすこの間に会話はあまりない。手で語る会話があったっていいのだろう。「こういうのがいちばんいいワークショップになるよね」と職人さんも言っていた。 その後も、帰りの車の中でソフトクリームが食べたいと言って癇癪を起こすなど、なかなか大変な一日だった。家に帰ると、疲れ果てたのか17時ごろには就寝した。 日曜は、初対面の子どもが多いフリースペースで過ごしたが、自由な雰囲気。一日中とても楽しそうに発散していた。

フリースペースには「HSC(ひといちばい敏感な子ども)」を持つ親御さんがきていて、「病院と連携するほうが学校との調整もうまくいった」という話を聞けた。放課後、学校のかわりの居場所となるスペースの情報をいろいろと教えてもらう。

ここで情報を得る中で、次なるキーワードが「不登校」になることに気づき、不登校の問題が急に身近になった。そのための支援を行っている団体や支援スペースなどは住んでいる自治体にもいろいろあることを知った。

といっても、そこにつながれば解決するわけではないので、当事者はみな苦しんでいる。

まずはむすこの居場所の探索と確保。それが安定してくると、学校に行けない間の学習支援も必要になるだろうなあ、となんとなく感じる。

*****

今朝も、起きてくるなり「学校に行きたくない」としぶり、ストレスがあるときによくやるように、ギリギリまでテレビをみる。 朝食を食べて、着替える。

土日明けの月曜だから、しかたないだろう。ともあれ、親の付き添い登校はしばらく続く覚悟を決めた。今日は、妻とむすこが出かけるのを見送る。むすこは家の前で、立ち往生し、ランドセルを地面に投げたりしていた。

ぼくは、3歳になる下のむすこを自転車に乗せて、いつのものように消防署の前の道を通り、保育園へ。「きょうは、救急車がひとついなかったね」。毎日、だいたい同じ時間に車みがきが行われている。

保育園の駐輪場につくと、下のむすこが「おにいちゃん、学校に行きたくないって、言ってたね。どうして?」と聞く。ぼくは「寂しいのかな」と答える。

「ランドセル捨てたね」 「そうだね・・・・・・」

一進一退の、「退」の日が続く。

我が家の家族構成: むすこの父である筆者は執筆開始当時、41歳。本づくりや取材執筆活動を行っている。取材や打ち合わせがなければ自宅で働き、料理以外の家事を主に担当。妻は40歳。教育関係者。基本的には9時~17時に近い働き方をしていて、職場に出勤することが多い。小1のむすこのほかに、保育園に通うむすこもいる。

【書き手】末沢寧史。異文化理解を主なテーマとする、ノンフィクションライター、絵本作家。出版社勤務を経て独立。絵本作品に『海峡のまちのハリル』(小林豊・絵、三輪舎)。出版社どく社を仲間と実験中。妻は教育関係者。本連載では、むすこの小学校入学直後に直面した行きしぶりと不登校をきっかけに、子どもという「異文化」について記します。