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2023.07.16

九州北部大雨、「表層崩壊」が多発 短時間の激しい雨で土石流に

 九州北部で9人が死亡するなど甚大な被害をもたらした記録的大雨から、17日で1週間。

 今回の土石流が起きたメカニズムはどうだったのか。九州大の笠間清伸教授(防災地盤工学)によると、福岡県久留米市田主丸町の竹野地区の背後にある標高600メートルほどの山が連なる耳納山地で、雨で岩盤より上の比較的層の薄い土壌が流出する「表層崩壊」が多発して沢に水気を含む土砂が集まり、そこに短時間で激しい雨が降って大規模な土石流となったという。

 土石流は、流れ出る土砂の量が飛躍的に多くなるため、集落まで達すると非常に危険だ。過去には大きな被害も出ており、2013年の伊豆大島土砂災害では、死者・行方不明者39人、14年の広島市の土砂災害では70人以上が死亡した。今回の大雨で、住宅2棟を巻き込み3人が犠牲となった佐賀県唐津市浜玉町の現場でも発生したとみられる。

 長雨がしとしと降るより、短時間にまとまった雨が降った方が土石流が起きやすく、竹野地区で土石流が発生した時間とされる10日午前9時半までの耳納山の24時間雨量は402・5ミリで観測史上最大だった。地区を流れる千ノ尾川上流には砂防ダムが設置されていたが、笠間教授は「土砂の量が多くて食い止められなかったのだろう。これだけの降雨があるとリスクは飛躍的に高まる」と話す。

 笠間教授は「地滑りなど他の土砂災害に比べ移動速度が速く、流下距離も長い」と危険性を強調する。一方で発生前には、斜面から水が染み出たり山鳴りがしたりするなどの前兆現象があり「このような現象を見逃さず早めに避難することが大切。危機意識を高めてほしい」と呼びかける。【城島勇人、五十嵐隆浩】

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