ソーシャルアクションラボ

2023.08.30

目標は「最低賃金以上」 障害のある店員、生き生き働くカフェ

 ハンドドリップで入れた、ほのかに酸味のあるコーヒーが楽しめるカフェ「ドンバスコーヒーロースターズ」が7月12日、新潟市北区にオープンした。豊かな香りが漂う店内ではさまざまな障害のあるメンバーが店員として働き、「コーヒーをいれるのが楽しい」と生き生きとした笑顔を見せる。【石田奈津子】

 社会福祉法人「とよさか福祉会」(同市北区)が、世界各地のコーヒー豆の加工販売を行う「鈴木コーヒー」(同市中央区)との協業で開店した。同福祉会運営の障害者の就労支援の事業所に通う人たちが働いている。店名の「ドンバス」は地元の言葉で、福島潟(同市北区)に生息する水草のオニバスの呼称。個体によって発芽の時期や葉の大きさは一定せず、まちまちなことを社会に見立てて「障害の有無も含め、一人一人の違いを受け入れて一緒に生きる」との思いを込めて名付けた。

 コーヒー豆は鈴木コーヒーが提供。イチオシは、エチオピア産の豆などを使い、柔らかな酸味を感じられるハンドドリップコーヒーだ。また、お店オリジナルで上品な香りが特徴の「ドコブレンド」のホットコーヒーなどもある。豆だけの販売もしている。

 身体、知的、精神など多様な障害がある店員が働きやすいよう、店内の随所に工夫がみられる。例えば、手先が不自由な人のために、コーヒー豆はあらかじめ一杯ごとの個包装にしておき、入れるたびに計量する手間を省いた。また、車椅子を利用する人が働きやすいように作業スペースを広く取り、スライド式の低めの台を取り付けた。

 また、店内には店員たちが描いた、ドンバスの葉の裏側を色とりどりに描いた大型作品や、木の廃材に世界地図を描いた作品などが飾られている。

 メンバーの一人、堀田恭平さん(21)=新発田市=は「最初はあいさつを覚えるのが大変だった」と振り返る。働き始める前は金髪だったのを黒髪に染め直し、身だしなみを整えた。「たくさんのお客さんが利用するので驚いた。今はコーヒーをいれるのが楽しい」と話した。

 同店が目標の一つに掲げるのが、「勤務に最低賃金以上を支払う」ことだ。堀田さんらメンバーが通う事業所は「就労継続支援B型事業所」で、こうした事業所では報酬の工賃は最低賃金よりもかなり低く設定されていることが多いという。とよさか福祉会の小林誉尚・支援課長は「ここでしか味わえない、おいしいコーヒーを提供して正当な利益を得ることで、事業所の賃金水準の向上につなげたい」と意気込みを語った。

 ハンドドリップコーヒーは500円、ホットコーヒーとアイスコーヒーは390円。新潟市北区葛塚3304の5(駐車場あり)。営業時間は午前11時~午後4時半、定休日は日曜、月曜。

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