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2023.09.09

台風13号から一夜明け 千葉で213棟浸水、茂原市民「またか」

 台風13号の影響による記録的な大雨から一夜明けた9日、千葉県内では、けが人や住宅被害、土砂崩れなど新たな被害が明らかになった。県によると、市原市と千葉市で計4人が軽傷を負ったほか、住宅被害は一部損壊12棟、床下・床上浸水は少なくとも213棟に上った。市街地が広範囲にわたって浸水被害を受けた茂原市では、住民らが水が引いた住宅や敷地から泥をかき出す作業に追われた。【長沼辰哉、林帆南】

 「またかと思った」。自宅1階が膝上まで浸水した同市八千代の吉野文子さん(76)は嘆いた。2階に避難して家族も無事だったが、畳は水につかり、洗濯機や冷蔵庫も壊れた。

 同市では1989年以降、96年、2013年、19年と4回にわたって大規模な浸水に見舞われ、前回は4200棟以上が浸水した。吉野さんは「住み始めた40年前はこんなに水害が多いとは思っていなかった。今回は4年前より水位は低かったが、年を取ったので片付けるのも大変」と疲れた表情で話した。

 同市八千代の唐揚げ店店長、三枝義治さん(48)は「ここまでの被害になるとは」と肩を落とした。8日午前、販売用の弁当を用意していたところ、道路がみるみるうちに冠水し、慌てて避難した。水が引いた後に店に戻ると、食材が入った冷蔵庫は倒れ、店内は泥に埋もれていた。「再開には1カ月以上かかると思う」と話し、黙々と泥をかき出す作業を続けた。

 同市早野の住宅型有料老人ホーム「時の村早野館」では床上約20センチまで浸水、1階に住む6人が2階以上に避難した。副館長の三本博子さん(67)は「寝たきりの方を昇降機を使って上の階に移動させたが、途中で止まり、職員が運んだ。前回の水害を経験しているので、早めに動けたが、今も断水が続いていて大変です」と話した。

 被害を受けた地域では、地元の消防団員らが1軒ずつ声を掛けて回り、水につかった家具などの運び出しを手伝った。消防団員の丸貴大さん(37)は「今回は水がなかなか引かず、夜遅くまで膝上まで水がたまっていた地域が多かった。高齢者の家を中心に力仕事を手伝いたい」と他の団員3人とともに作業に当たった。

 この日、熊谷俊人知事は茂原市の田中豊彦市長とともに、被害地域を視察した。19年の大雨被害を受け、市内を流れる一宮川では県が堤防のかさ上げ工事を進めている。熊谷知事は「今回は19年の台風よりも降水量が多かったが、水位は少し低かったようで、工事の効果が一定程度あった。今後も上流下流を含めて、官民一体で水害対策を全力でやっていく」と話した。

◆被害まとめ

 県などによると、新たに4人のけが人が明らかになった。市原市で90代女性が自宅の裏山が崩れ、下半身が埋まって軽傷を負った。千葉市稲毛区の中学校では生徒が雨漏りでぬれた床で転倒した。同市緑区では車のスリップ事故で運転していた2人が軽いけがをした。

 河川の氾濫は、千葉市若葉区や佐倉市、匝瑳市など新たに7河川で確認された。県によると、8日に確認された7河川を含めいずれも危険水位を下回った。停電は9日午前6時ごろに銚子市など8市町村で計1万4720戸に上った。市原市月崎地区では、土砂崩れによる通信ケーブルの切断で固定電話やインターネット計約755回線が不通となった。

 また、県は8日、茂原市▽鴨川市▽山武市▽大網白里市▽睦沢町▽長柄町▽長南町▽大多喜町――の4市4町に災害救助法を適用すると発表した。

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