2023.09.10
当事者団体でも支援団体でもなく 団体名のLGBTQに「+」付けた意味
「しずおかLGBTQ+(プラス)」代表理事 細川知子さん(50)
「私たちは『当事者団体』でも『支援団体』でもない。『みんなの団体』です」
性的少数者のLGBTQなどが抱える課題に対処していくうえで、当事者団体が果たしてきた役割は大きい。自身は「非当事者」だ。代表理事を務めるNPO法人「しずおかLGBTQ+(プラス)」は当事者と非当事者が半々。団体の特徴である「誰でも参加できる」ことを「+」が象徴している。
LGBTQの課題に向き合うきっかけは2013年に40歳で静岡大人文社会学部に編入学したことだった。社会学を学ぶ中で、10代のころから関心があったジェンダー分野に絡めて、ある仮説が頭に浮かんだ。
「LGBTQの課題を解決できる社会は、福祉全体の大部分も解決していけるのではないか」
そこからの行動は速かった。入学した年のうちに現在のNPO法人の前身となる市民団体「LGBTしずおか研究会」を一人で設立した。県内では当事者同士が顔を合わせる場が少なかったが、毎月のようにオフ会を開く中で30人ほどが集まって思いを語り合うようになった。
ここ数年、力を入れているのは、自治体のLGBTQ政策「居場所作り」への協力だ。自分が当事者かもしれないと思っている人を含め、時には家族や友人も参加して悩みを打ち明けたり、交流したりする会でサポート役を務める。対面で個別相談を受けることもある。
悩みは地方ゆえの「圧倒的なマンパワー不足」だ。例えば静岡市主催の交流会「にじいろカフェ」は1~2カ月ごとの開催だが、参加対象が毎回替わるため年に一度しかチャンスがない人もいる。
「知識と経験を備えたスタッフをもっと養成できれば、回数を増やせるのに」
当事者の深刻な悩みには医療との橋渡しが必要なケースもあるが、LGBTQの専門知識を持つジェンダークリニックも都市部に偏っている。就職差別などで貧困に苦しむ当事者にとっては、距離が障害となって通院もままならないのが実情だ。
いつか活動へのニーズがなくなり、法人を解散するのが最終目標だが、まだ見えてこない。「社会の生きにくさを、なぜいつまでもマイノリティー側が訴え続けなくてはならないのか。当事者にその困難を負わせる時代はとっくに終わっている」。団体名に「+」を入れた理念を胸に、活動はまだ続く。【丹野恒一】
■人物略歴
細川知子(ほそかわ・ともこ)さん
静岡市出身。夫と子ども2人の4人家族。趣味はドライブと釣り。22年度から県男女共同参画センター交流会議(あざれあ交流会議)理事。
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