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2023.09.14

社会人野球支えた半世紀 旧北銀グラウンド、太陽光発電所に再生

 かつて社会人野球の北信越地区で一時代を築いた北陸銀行(1999年廃部)の本拠地だった旧北銀記念グラウンド(富山市西大沢)が、大規模な太陽光発電所に生まれ変わった。同銀行と北陸電力(同市)の共同事業で地方銀行としては国内最大規模。約半世紀にわたり富山県の社会人野球を支えたグラウンドは、環境保護へと社会貢献の形を変えた。

 北陸銀行野球部は1953年に創部し、都市対抗野球大会に5回、日本選手権に8回出場。両大会でそれぞれ2勝を挙げ、北信越地区の社会人野球界でトップクラスの技量を持っていた。しかし99年、銀行本体の経営健全化のため47年の歴史を閉じた。

 同グラウンドは創業100周年記念事業の一つとして77年に完成。99年の廃部後は、跡を受け継いだ北銀クラブ、富山ベースボールクラブの練習場などとして活用され、時にはOBの交流戦にも使われていたが、昨年取り壊され、現在は観客席の一部を残してその痕跡はない。

 跡地に完成した太陽光発電所は、昨秋、北銀と北陸電力が締結した「カーボンニュートラルの推進に向けた連携に関する協定」の取り組み第1号。グラウンドと隣接するサブグラウンドなど北銀の所有地約3万5000平方メートルを利用し、北陸電力ビズ・エナジーソリューションが太陽光パネル約5600枚を敷設、「ほくほくソーラーパーク富山県大沢野」として整備した。発電量は一般家庭約1100世帯の年間使用量に相当する同約3300メガワット時を予定する。発電した電力は北銀の北陸3県の支店などで利用され、北銀が使用する電力量の25%をまかなえるほか、年間約1600トンの二酸化炭素(CO2)を削減することができるという。建設費は非公表。

 8月30日に現地で行われた完成式では、両社の関係者約20人が参加。北銀の中沢宏頭取は「今後も2030年のゼロカーボンに向けてしっかりと取り組んでいく」と話した。

 一方、北銀野球部元監督で厚生課長時代にグラウンド建設に尽力した高松康博さん(91)=同県滑川市=は、かつて情熱を注いだ野球部のシンボルがなくなったことについて「寂しいが時代の流れで仕方がない。球場はなくなってしまったが、野球部の残したレガシーは私の記憶の中にしっかりと残っている」と名残を惜しんだ。【青山郁子】

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