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2023.09.15

台風被害、茨城で「ボランティア格差」 日立市は100人超なのに…

 台風13号に伴う豪雨で浸水被害の多かった茨城県日立、高萩、北茨城の3市で、災害ボランティアの集まり具合に「格差」が生じている。特に474棟(14日午後5時現在)の民家が浸水した北茨城市では、ボランティアの人数が11日は4人、14日になっても41人にとどまり、依頼に追いついていない。豪雨から1週間となる15日を前に、中小企業などの被害も膨らみ続けている。【鈴木敬子、田内隆弘、長屋美乃里、木許はるみ】

依頼に対応できたのは半数

 常陸大宮市の団体職員、佐藤伸さん(64)は14日、日立市東金沢町で床下浸水した住宅の庭の泥をかき出した。2011年の東日本大震災や15年の関東・東北豪雨でもボランティアを経験。この日は夏休みで「水害は泥の片付けがとても大変。けがに気を付けながら、明日も参加したい」と話した。

 日立、高萩、北茨城3市の社会福祉協議会は全国からボランティアを募っており、日立市では14日昼までに約90件のボランティアの依頼を受け、14日は110人が参加した。

 中には報道で人手不足を知り、初めて災害ボランティアに参加したという人も。市内の男性(61)は「これまでなかなか踏み出せずにいたが、身近な人たちが苦しんでいるのを見て参加せずにはいられなかった」。被災した1人暮らしの女性(80)は「自分1人では(作業)できないのでありがたい」と感謝した。同市では3連休のボランティアの申し込みが増えている。

 一方、高萩市では10~13日に災害ごみ出しや泥かきなど約80件の依頼が社協にあり、対応できたのは約半数にとどまる。被災者の中には依頼をためらっている人もいるといい、社協の職員が住民を訪ねてニーズの把握に努めている。

 北茨城市では、活動を始めた11日は4人だったボランティアが増えはしたが、14日は41人。3連休中は県社協などがボランティアバスを運行する予定で、北茨城市社協は「100人くらいずつ来ていただけるとありがたい。もっと参加をお願いしたい」と願う。

日立製作所野球部「今は助ける番」

 日立市では14日、日立製作所野球部の監督、コーチ、選手ら36人が6組に分かれて市内各所の民家を訪れ、ぬれた家財の搬出や家の清掃などを手伝った。

 野中祐也主将(31)ら7人は、助川町3の会社員、久保木安男さん(69)方で庭に30センチほど積もった泥かき作業に当たった。それまで1人で作業していた久保木さんは、「病気のため右半身にまひがあり、泥を取り除くのに今年いっぱいかかると思っていた。作業が一気に進み、助かりました」と涙ながらに感謝した。

 野中主将は「想像した以上に大変な状況を目の当たりにして、少しでも助けになればという思い。大変な作業だが、ありがとうと声を掛けられると疲れも吹き飛びます」と汗をぬぐった。田中政則選手(39)は「普段市民に応援してもらっている立場なので、こういう時は助けになれれば。一日も早く普段の生活を取り戻してほしい」と話した。

床上浸水510棟、床下浸水は592棟に

 県などによると、県北で民家被害が新たに確認され、床上浸水は14日午後5時までに510棟、床下浸水は592棟に上った。また日立市で土砂が流れるなどして14棟の一部破損が判明した。

 中小企業の被害は8億4000万円(推計値)、農林水産関係の被害は約2億2951万円(暫定値、一部重複)に上っている。

 一方、断水していた日立市十王町高原沢平地区は14日午後3時に簡易水道が復旧した。

 高萩市は14日、床上浸水以上の被害があった市民の応急仮設住宅(8室)への入居を受け付け始めた。同市上手綱の手綱住宅(2LDK)で、2024年9月7日まで入居可能。市役所2階都市建設課に申し込む。

 車が浸水した被災者のため、市は高戸、肥前町、下手綱、上手綱の4地区で16~18日、災害ごみの回収を行う。住民は可能な範囲でごみを分別し、道路脇などの回収しやすい場所に置く。

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