ソーシャルアクションラボ

2023.10.04

「守るを学ぶ」 防災意識向上に取り組む学生たち

 関東大震災から今年で100年。地震や台風など自然災害の脅威に対する備えの大切さに改めて関心が高まる中、「守るを学ぶ」をテーマに、防災意識向上に向けて活動している大学生たちがいる。大東文化大学の防災サークル「STERA」だ。

過去の災害経験が入会のきっかけ

 同団体は2019年5月に三沢輝之さん(24)と鴨田寛太郎さん(23)=ともに23年卒業=が立ち上げ、20年1月に大学の公認を受けた。鴨田さんは高校生の時から埼玉の防災情報を集めて発信するアカウントを運営していた経験がある。大学で出会った三沢さんと、防災に関する取り組みを始めることで意気投合したのが設立のきっかけだったという。現在9人のメンバーが所属している。

 自らの災害の経験がサークル入会のきっかけとなったメンバーも多いという。現副代表で文学部3年の矢倉侑奈さん(20)は高校1年生だった18年9月、地元の北海道で、道内では初の最大震度7を観測し、44人の死者を出した胆振(いぶり)東部地震を経験した。「大学で防災サークルがあることを知り、自分の経験を生かしてさらに防災について知っていきたいと思い入会を決めた」そうだ。

 主な活動は、地域の防災イベントへの参加・運営サポートや、災害ボランティア、被災地の視察など。今年6月には、台風2号接近による記録的豪雨で甚大な被害が出た埼玉県越谷市で災害ボランティアに参加し、床下の水抜きや袋詰めなどを行った。

 同大のキャンパスのある同県東松山市と東京都板橋区はいずれも荒川流域にある。荒川は19年10月の台風19号による豪雨で大洪水寸前となる危機に直面したことから、水害対策の取り組みに力を入れているという。

 今年9月からは埼玉県防災学習センター「そなーえ」で開催中の関東大震災についての企画展で、同震災の被害や影響を各会員が所属する学部学科の視点からまとめた資料を展示している。

「さまざまな視点」で考える大切さを学ぶ

 同月17~18日には、横浜市で行われた官民390団体参加の国内最大級の防災イベント「ぼうさいこくたい」にも出展。設立してから今まで毎月SNS(ネット交流サービス)で発信している活動報告の取り組みや、災害ボランティア参加など活動実績の展示を行った。現代表の経済学部3年、泉田峻さん(21)は「大規模イベントへの出展は初めてで、準備はとても大変だったが、同じ防災に関する活動を行っている他大学の学生や企業、行政機関などとつながりを持つことができた」と話す。

 同団体は「防災でつなぐコミュニティー」を活動の合言葉としている。大切なのは災害が起こった時点で住民が初めて顔合わせをするのではなく、日ごろから顔の見える関係を作ること。同イベントに参加して「お年寄りや子ども、子育て中の母親、ペットを飼っている人などさまざまな視点で防災を考え、理解しようとする姿勢を持ち続けることの大切さを改めて実感した」という。

 自然災害が多発する日本。いつ誰が大規模災害に直面するか分からない現状だが、泉田さんは「若い人たちの中で、まだまだ災害を自分ごととしてとらえる人は少ない。我々の活動をSNSなどを通じて知ってもらって、少しでも防災に興味を持ち、自分なりの防災への関わり方を見つけてくれる人が増えたらいい」と語った。

 そして今後の活動について「他大学の学生と連携して、合同で勉強会や防災訓練、防災啓発イベントを開催することなどを考えている。大学の垣根を越えてコミュニティーを作り、活動をしたい」と意気込んだ。【明治大・奥津瑞季(キャンパる編集部)】

関連記事