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2023.10.10

工場の排出熱、農業ハウスの空調機器に利用 実証実験中 浜松

 電線や空調機器のメーカー・矢崎エナジーシステム(東京都港区、矢崎ES)は今月、浜松市南区の浜松工場で、環境に配慮した農業ハウスで植物を栽培する実証実験を始めた。工場から排出された熱や太陽光発電を利用し、エネルギー経費を削減して農作物を安定生産する環境保全型農業を目指す。【山田英之】

 矢崎ESは自動車部品大手・矢崎総業の子会社。1963年に矢崎電線として設立、2012年から現在の社名になった。従業員約1900人。

 農業ハウスは高さ3メートル、幅15メートル、奥行き6メートル。農業技術の開発会社・カルティベラ(沖縄県)と共同開発契約を結び、電力を自給自足するハウス内での栽培に乗り出した。

 ハウスの屋根に太陽光発電パネルを付けて電力を供給する。太陽光発電以外にも、工場の機械を動かす過程で出る余分な熱(廃熱)を使って空調機器を稼働させ、年間を通してハウス内を人工的に春の気候に保つ。室内はLED(発光ダイオード)の光で昼や夜の状況を作り出す。

 室内で植物を栽培する植物工場は、初期投資額が大きく、電気料金の高騰で収支が悪化するという課題がある。今回の試みは廃熱や再生可能エネルギーを活用し、従来の植物工場よりも低価格化を実現し、世界の食料や環境問題の解決に貢献するのが狙いだ。

 矢崎ESの従業員や家族は今月8日、実験で最初に栽培する植物としてイチゴの苗をハウス内に植えた。来年2月ごろ収穫できる予定だ。

 矢崎ESの稲垣元巳・商品企画開発部長は「エネルギー価格の高騰で農業経営は厳しくなっている。社会の困りごとに技術で貢献したい。効率よく栽培できることを証明して、環境保全型の農業システムを国内外で展開したい」と話している。

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