ソーシャルアクションラボ

2023.10.11

「野菜を調理する」を、地域へ:白梅学園大学が届ける「Amiちゃん宅急便」

「枝豆とオリーブオイルと塩で炒めて下さい♪ ニンニクもあればとてもおいしいです!ぜひ作ってみてください」――。

白梅学園大学(東京都小平市)では、大学の周辺で暮らす人や、アルバイトの雇い止めにあうなどした学生に向けて、食糧支援を続けています。

活動の中心となる白梅学園大学子ども学部の田中真衣准教授に、くわしくお話を伺いました。
誰に、どのような形で食料を届けていますか?

寄付で大学に集まった野菜や調味料、主食などをダンボールに詰めて、大学周辺――障害者が暮らす「グループホーム」や、里親などの養育者が複数の子どもを育てている「ファミリーホーム」、障害児支援施設などに届けています。

また、白梅学園大学でダンボールにつめた食料品を、教員の車で、児童養護施設などを巣立った子どもたちを支援する「アフターケア相談所ゆずりは」(東京都国分寺市)にも届けています。そして「ゆずりは」から、食料品などが必要な各家庭や地域の施設にも発送していただいています。

昨年夏にはじまったこの活動を「Amiちゃん宅急便」と読んでいます。名前は「友好」というフランス語(Amity)が由来です。私と学生10人ほどが、主に関わっています。

日々いっぱいいっぱいだと、「野菜を食べた方がいい」と分かっていても、「野菜を調理する」までたどり着かない。支援施設での暮らしを経て、一人暮らしをはじめた場合は、どうやって野菜を調理したらいいか、すぐに分からないこともあります。調理をしないで食べられて、おなかにもたまる「カップ麺やスナック菓子ばかり食べる」という声も聞こえてきます。

ですから、白梅学園大学で栄養学などを学ぶ学生が工夫して献立を作ったり、「この野菜とコンソメをまぜて料理するといいですよ」、と簡単で具体的な調理法を書いたメモを野菜と一緒にお配りしたりしています。

こういった、暮らしていく上で、あったほうがよい、細やかな部分を、お節介ではあったとしても、地域で支える。地域にある大学として、広い視点で支える。今後は、子どもたちに向けて絵本や遊びを通じた食育イベントも開きたいと考えています。

食料を配るだけでなく、食生活の豊かさも、無理なく伝えるようにしているんですね。
学生が考えた「Amiちゃん宅急便」のキャラクター

じゃがいも、にんじん、小松菜、きょういも、キャベツ、ゆず――。野菜は、大学の近くの農家さんや八王子の農家さんからのご厚意でいただいています。白梅学園大学で働いていた教員が作っている野菜も届くんですよ。季節に応じて、そのとき採れる新鮮な野菜をいただいています。こんなふうに、温かいつながりのおかげで、続けることができています。

白梅学園大学では2020年12月、コロナ禍における学生の生活を支えるために、「フードパントリー」をはじめました。そこに集まった食料品の一部を、「Amiちゃん宅急便」として、地域で必要としている方にも届けているのです。賞味期限や鮮度の保てない食材も破棄することなく、適切な場に届くような仕組みを試行錯誤しつつ、作っています。

(聞き手・編集:山内真弓 次回は「フードパントリー」について詳しくお伝えします)
【語り手】田中真衣。白梅学園大学子ども学部准教授(社会福祉学)。児童養護施設に勤務し、厚生労働省では障害福祉専門官として障害児の政策立案に携わる。2007年に「子育て家族支援団体SomLic」を立ち上げ、ペアレント・トレーニングを地域で開催し続けている。2児の母。
田中真衣准教授 ※原稿は、2022年に執筆しました。