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2023.10.12

問いかける視線 段ボールの生き物たちの物語 兵庫・尼崎で企画展

 オランウータンやトラといった絶滅危惧種の動物、空中を泳ぐ金魚、巨大な恐竜や壁を突き抜けるキリンのおしりがスポットライトを浴びて、今にも動き出しそうだ。兵庫県尼崎市総合文化センター美術ホールで開催される企画展示。「絶滅危惧種」「サカナたち」といった10の「物語」で構成された大小約130の作品は全て古紙段ボールでできている。

 造形作家の玉田多紀さん(40)=埼玉県=は神戸で育ち、多摩美術大卒業後、生き物の造形美や性質を独自の立体作品で制作する。有機的でなめらかな形は、段ボールを水に漬けて薄くはがしたり、接着剤とまぜて粘土状にしたりして作る。

 絶滅危惧種のテーマは生き物を扱う作家の宿命と考え、「自然との共生、生き物と人間とがどう付き合っていくのか。今一度立ち止まって考えるべきだ」と玉田さん。また、海洋プラスチックごみなど現代社会の問題に目を向け、見る人たちに気付きを与え、想像力を刺激する。

 9月24日のワークショップには20組が参加し、玉田さんの指導で、それぞれが思い描く生き物を約2時間で作った。大阪市東住吉区から家族でワークショップに参加した秦一登(はたいちと)さん(11)は、「平たい段ボールがイメージ通りの立体となるのは楽しい」と笑顔を見せた。

 玉田さんは「人を巻き込む仕掛けを考え、見に来た人を心も体も『動かす』展覧会を作り続けていきたい」と話す。会場では一部、作品の中に入ったり、触れたりできる。

 展示は10月29日まで、午前10時~午後5時。28日午後1時からと29日は、会場に玉田さんが訪れる。火曜休館。一般700円、65歳以上・大学生600円、高校生以下無料。問い合わせは同センター(06・6487・0806)。【北村隆夫】

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