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2023.10.12

2010年ごろに何が?…北半球の気候、急激変化 猛暑頻発にシフト

 地球温暖化を背景に、2010年ごろに北半球で急激な気候の変化「レジームシフト」が起き、北日本で近年猛暑が発生しやすくなったとの論文を、三重大と九州大の研究チームが発表した。

 チームは、過去65年間(1958~2022年)の北日本の夏(6~8月)の気温や、日本付近の高気圧の発生状況などを統計解析した。

 論文では、夏の気温が50年に15回以下しか起こらないような低温だった場合を「冷夏」と定義。温暖化に伴い、日本の平均気温は長期的には上昇傾向にあるが、毎年の変動は大きく、00年代までは冷夏が発生していた。だが、10年以降冷夏はなく、平年値を下回る年もなくなった。

 また、10年ごろから上層がカムチャツカ半島付近、下層が北日本付近というように南北に傾いている高気圧の発生頻度が増え、ほぼ毎年発生するようになった。こうしたことから、チームは10年ごろに北半球で気候が急激に変わり、猛暑になりやすい状態にシフトしたとみている。

 急激な変化の背景には温暖化があるという。南北傾斜高気圧は東西の温度差が大きくなることで発達する。チームはこの高気圧の発生頻度増加の理由として、温暖化が進む過程で日本の西側の大陸のほうが東側の太平洋よりも温度上昇のスピードが速いことに加え、偏西風が蛇行傾向にあることを挙げた。

 チームの立花義裕・三重大教授(気候力学)は「10年以降、平年より高温の年が10年以上継続しており、あまりにもきれいに境目が表れていて驚いた。この変化が続く限り冷夏が発生する可能性は低い。高温対策により重きを置いた農作物の品種改良などが必要だ」と話す。

 論文は米気象学会誌(https://doi.org/10.1175/JCLI-D-23-0191.1)に掲載された。【垂水友里香】

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