ソーシャルアクションラボ

2023.10.15

生理用品に選択肢を 国内初の「月経ディスク」開発した女性社長

 「月経ディスク」と呼ばれる、国内では流通していなかった生理用品をオンラインで販売する会社がある。名古屋市中村区の「MONAcompany(モナカンパニー)」社長の向井桃子さん(35)は「生理用品の選択肢を広げたい」と起業することを決意した。

 元々飲食チェーンに10年間勤めていた。しかし、新型コロナウイルス下で出社できる回数が減り、副業で行っていたパーティー向けのアクセサリー販売も結婚式が中止になるなどして売れ行きが不調になった。

 子育てとの両立や、自分で在庫管理をする必要がないことから、消耗品のオンライン販売に挑戦したいと思うようになった。

きっかけは長女の出産

 きっかけは2020年夏、長女の出産だった。病院でもらったナプキンがごわごわして気持ち悪いと感じた。夫が購入してくれたオーガニックのナプキンを使用すると、それまでストレスに感じていた臭いが気にならず快適だった。

 「生まれてきた娘にも生理の話をきちんとしたい」。そう考えていた時、友人がアメリカから「月経ディスク」という生理用品を取り寄せていると聞いた。膣(ちつ)の奥に装着し、カップ内部に経血をためることのできるアイテムだった。

 「わざわざ取り寄せるなんてそんなに良いものなのか」と試してみると、着けている感じがしなかった。

 定番の生理用ナプキンやタンポンより奥に装着することから違和感がなく、装着したまま体を前方に倒しておなかに力を入れると、手を汚さずにカップの中にたまった血液を捨てることもできる。「日本でも必要な人がいるのでは」。産後2カ月目には役所を訪ね、国内での製造・販売に向けて奔走した。

ユーチューブで資金2000万円集め

 製造先を探したものの、認知度が低い月経ディスクの必要性に理解を得るのは難しかった。50社以上に電話で協力を求めた結果、ゴム製品を取り扱う名古屋市の「ゴムノイナキ」が製作に協力してくれることになった。

 法人設立にあたり、資金面もハードルとなった。銀行からの融資を考えていたが、経営の経験がなかったことや、月経ディスクが国内で初めて販売されることから難航。だが、起業家などが出資を募る動画投稿サイト「ユーチューブ」の人気チャンネル「令和の虎」に出演し、2000万円を集めることができたため、昨年3月に起業した。

 月経ディスク「MOLARA」は樹脂製のおわん形で、直径は約6センチとコンパクトだ。最大で12時間装着でき、着けたままお風呂に入ることもできる。「仕事などで取り換える時間のない人や、旅行に行く際に使ってほしい」と考えている。会社サイトやアマゾンで1箱9個入りで6435円(税込み)で販売している。

生理の理解広げる取り組みも

 取り組みは商品の販売だけにとどまらない。男性600人に生理に関するアンケート調査したところ、回答者の2割が「生理を理解してあげたい」と答えたのに対し、「関わりたくない」「イライラする」といった回答もあった。

 今年8月には従業員が1人加わった。9月には企業や視覚障害者を対象に生理用品や対処方法についてのセミナーも開くなど、活動の幅も広がる。

 「学校でも生理用品の種類や使い方を教わる機会はあまりない。月経ディスクなどの新しい選択肢もあると知ってもらい、自分に合ったものを選んでほしい」

【熊谷佐和子】

むかい・ももこ

 1988年生まれ。3歳ごろまでアメリカで育つ。その後は愛知県小牧市に移り、現在は名古屋市在住。今年8月に従業員1人が入社した。7~8月には女子高校生のインターンも受け入れた。

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