ソーシャルアクションラボ

2023.10.15

「共に生き、平和な世界を」 アイヌ復権に尽力、宇梶静江さん訴え

 アイヌ民族の復権に力を注いできた古布絵(こふえ)作家の宇梶静江さん(90)=北海道白老町在住=のトークショーが15日、北海道立近代美術館(札幌市中央区)であり、これまでの人生を振り返り、共生社会の実現を訴えた。宇梶さんが代表を務める一般社団法人「アイヌ力」などの主催。

 宇梶さんは旧荻伏(おぎふし)村(現浦河町)出身。23歳で上京し、1972年に新聞の投稿欄で「ウタリ(同胞)よ、手をつなごう」と呼び掛け、東京ウタリ会の設立に尽力した。

 60代で札幌のデパートで古布絵に出合い、伝統的な刺しゅうを用いて、アイヌに伝わるカムイユカ●(神謡、●は小文字の「ラ」)の世界を表現した作品を創作。その後はアイヌを扱った詩や絵本も書いている。宇梶さんは「差別に苦しみ、それまで詩でもアイヌについて書けなかったが、カムイ(神)が古布絵に導き、先祖が背中を押してくれた。感謝しかない」と振り返った。

 2021年に65年ぶりに古里の北海道に戻った宇梶さん。聴衆から、夢について問われると「アイヌが体中に刺さったトゲを解放し、同胞が手をつなごうとしている。和人と仲良くして、深い言葉と伝統を尊重して共に生き、戦争のない平和な世界をつくっていきたい」と笑顔を見せた。

 会場では、宇梶さんの古布絵作品が展示され、アイヌにルーツを持つ歌手、豊川容子さんのミニコンサートも開かれた。【真貝恒平】

関連記事