ソーシャルアクションラボ

2023.10.19

空から枯れ木を見分ける新技術 ドローン森林調査、大幅省力化に期待

 空から森を見て木々の状態を調べます――。森林を上空から無人航空機(ドローン)で撮影し、枯れた木を見つけたり、木の大きさを調べたりする技術の実証実験を、埼玉県所沢市と森林調査会社などが17日から始めた。成功すれば国内初の技術で、人間が歩いて調べるのに比べて大幅な省力化を実現できるという。新技術が全国の枯死木対策や市の人手不足解消につながるか、注目される。

 近年、ナラ菌の感染でクヌギなどが枯死する「ナラ枯れ」が各地で問題になっている。同市も緑地保全のため約100ヘクタールの森林を管理しており、毎年、職員が枯れた木を確認し伐採している。だが、枯木を探し出すには職員8人で約2週間かけて森林を歩く必要があるという。

 作業を省力化しようと、市はNTT東日本に相談。同社の仲介で、森林調査用ソフトを開発・販売する会社「ディープフォレスト・テクノロジーズ」(京都市左京区)の協力を得た。

 17日は、市が管理する同市三ケ島の樹林地で、ディープ社の大西信徳(まさのり)社長(29)らが実験した。午前11時前、自動操縦のドローンを上空100メートルの高さまで計約30分間飛ばし、森林約10ヘクタールの画像を約500枚撮影した。

 画像は独自のソフトで分析し、午後0時半ごろには枯れているとみられた木をパソコン画面上で図示。個別の木の高さや、太さの推定値も算出した。木の太さは、伐採費用を市が見積もるのに欠かせないという。

 この森林は市職員が歩いて調査済みだ。今後、ドローンでの分析結果を職員の結果と比べ、分析法を改良する。技術が完成すれば100ヘクタールの枯死木調査を、職員1人が15時間ほどでできるようになるという。急斜面など人が立ち入りにくい場所も調査できる。効果が実証されれば、市はこのドローン調査を正式に導入する計画だ。

 同社によると、上空から個別の木の種類や太さなどを見分けるのは、「緑ばかりの写真になって難しい」とされていた。だが、京大大学院で森林科学を専攻していた大西社長は「葉の付き方や大きさなどで見分けられる」と考え、木々を見分ける技術を開発した。

 大西社長は「ナラ枯れは全国的に問題になっているが、足で歩いて実態を調べるのは大変な作業だ。この技術を完成させ、全国の調査現場で使ってもらえるようにしたい」と話した。【高木昭午】

関連記事