ソーシャルアクションラボ

2023.10.23

今年もあのスタートラインに 目に難病の男性、マラソン出場30年超

京都・福知山マラソン 11月23日号砲

 「11月23日、あのスタートラインに立つことが一番大変なんです」

 福知山市下小田の片野英人さん(67)は言葉に力を込めた。1991年の第1回大会から毎回11月23日に号砲が鳴る福知山マラソンに出場を続け、40歳だった第6回大会では、自己ベスト記録の2時間57分20秒をマークした。ところがその数年後、指定難病の網膜色素変性症と診断された。症状の急激な進行で視野は狭くなり、同時並行で続けてきたトライアスロンの競技は断念。地元のマラソン大会に途切れることなく心身を整えて参加し、完走し続けることが大きな目標となった。会社員時代は、夜勤明けのレースにも挑んだ。膝の軟骨移植手術を受けた時も、本番に間に合わせた。現在の視野は中心部に限られ、10年前の大会からは伴走する妻、和浦(かずほ)さん(58)のペースに合わせ42・195キロの丹波路を一心同体で駆け抜ける。

 新型コロナウイルス禍のため大会が中止になった2020、21年も、11月23日はいつもの時間、いつものスタートラインに2人で立ち、いつものコースを走り切った。3年ぶりにリアル開催された22年の大会は雨の中、4時間53分14秒でフィニッシュした。

妻と走り、未来へ大会の継承を

 定年後、鍼灸(しんきゅう)・あん摩マッサージ指圧師の国家資格を習得した英人さんは、治療院を営む傍ら週5日程度、毎回約10キロを走り大会に向けて二人三脚でトレーニングを続け、地元の三段池ランニングクラブにも所属している。和浦さんは「地元ボランティアのみなさんにアットホームな雰囲気で支えていただき、給水所も充実している。私が脱水のため途中リタイアした年もあったが、周りのランナーがゴールまでサポートしてくれたので夫は完走することができた」と大会の魅力や思い出を話す。英人さんは「全国的に地方のマラソン大会は苦戦しているが、せっかく地元で開かれる伝統ある大会。今年もあのスタートラインに立ち、楽しんで走りたい。走り続けることで大会を盛り上げ、若い世代に継承したい」と話している。

 福知山マラソンは、1万人規模の市民マラソンとして多くのランナーに親しまれてきたが、22年の30回大会の出場者は2961人と過去最低に落ち込んだ。今年は大会を6000人規模に縮小。実行委は大会ロゴを刷新して再スタートを印象付け、地元のスイーツでランナーをもてなす特別エイドステーションの設置、インスタグラマーとのタイアップ、近隣マラソン大会会場でのPR活動など、大会の魅力を高めるための新たな取り組みに挑戦している。しかし、通常の参加受付が終了した時点でエントリーは3000人強と苦戦を強いられている。実行委は11月1~17日には出走権のみの直前エントリーを受け付け、出場を迷っているランナーへのPR活動にラストスパートをかける。【綾井まどか】

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