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2023.10.30

水銀含む蛍光灯、早期禁止に日本「待った」 25年禁止案に反対

 水銀による健康被害や環境汚染の防止を目指す「水銀に関する水俣条約」の第5回締約国会議が30日、スイス・ジュネーブで開幕した。水銀を含む一部の蛍光灯の禁止時期が焦点で、欧州連合(EU)やアフリカ諸国が「2025年」を提案しているのに対し、日本は反対。水俣病を経験した日本が早期禁止に「待った」をかける構図で、NGOなどから批判が出ている。

 同条約は13年に熊本県で開かれた外交会議で採択された。既に電池や体温計などの水銀含有製品の製造・輸出入を原則禁止している。

 第5回締約国会議では、例外的に禁止対象から除外されていた製品のうち、水銀含有量の少ない直管蛍光灯などについて製造・輸出入を禁止する時期の合意を目指している。EUなどは、主に駐車場や倉庫などで使われる直管蛍光灯について25年禁止を提案。日本の政府関係者によると、これまでの交渉でイランやインドもこの提案に反対を表明しているものの、先進国で反対したのは日本だけだという。

 日本は条約事務局に提出した文書で「(日本を含む)各国が廃止できるのは27年以降だ。直管蛍光灯の(早期)禁止が決定されると市民生活に支障をきたす可能性がある」と主張している。だが、禁止時期を27年以降とする主張への支持は広がっていないもようだ。

 EUとアフリカ諸国はさらに、環状の蛍光灯などを26年までに禁止することも提案している。経済産業省担当者はこの提案に関し、「一定程度は準備・交換の期間は必要だろう」とし、国内で早期廃止が容易ではないとの認識を示す。

 25年禁止案には反対しているものの、日本でも気候変動対策の観点からLEDへの移行は喫緊の課題だ。14年に閣議決定されたエネルギー基本計画では、LEDのような高効率照明を20年までに出荷(フロー)で100%、30年までに既設照明(ストック)で100%とする目標を掲げている。日本照明工業会の推計(10月時点)によると、出荷ではLED照明器具が99%を占めるが、既設照明では約57%にとどまる。

 専門家やNGOで作る国際組織「クリーンライティング連合」グローバル・キャンペーン・リーダーのレイチェル・カマンデ氏は「海外では既存の蛍光灯器具に取り付け可能なLEDが普及しているが、日本では器具の全交換などが主流で、切り替えを加速させることが難しい。水俣病の歴史を持つ日本は一刻も早い蛍光灯禁止を支持すべきだ」と指摘する。【岡田英、永山悦子】

水俣条約

 水銀による健康被害や環境悪化を防ぐことを目的とし、世界規模で水銀の使用や輸出入を規制する国際ルール。水俣病の悲劇を繰り返さない決意を込めて、日本政府が名称を提案し、2013年に採択された。17年に発効。147の国・地域が参加している。体温計や血圧計、電池などの水銀含有製品については20年までに製造・輸出入を原則禁止した。また、水銀鉱山の新規開拓を禁止し、各国に水銀の適切な保管や廃棄を求めている。

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