ソーシャルアクションラボ

2023.11.01

国内最高品質の不燃木材 脱炭素化に貢献 福岡県の研究所など開発

 地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の削減を進めるため、福岡県工業技術センターインテリア研究所(大川市)や九州木材工業(筑後市)などは、経年劣化しにくい不燃木材「不燃木(ふねぎ)」を共同開発した。建築基準法の「防火材料」のうち、最も難燃性が高い「不燃材料」として国に認定された。難燃処理した木材の認定は九州初。床などの内装材に使え、12月から全国のゼネコンなどに販売する。【野間口陽】

八女市役所新庁舎に採用

 不燃木材とは、難燃剤を注入し、燃えにくくしたもの。ただ従来の難燃剤は空気中の水分を吸収しやすく、年数がたつと、木材の表面に薬剤がにじみ出たり、にじみ出た薬剤が固まる「白華(はっか)」が発生したり、美観や意匠性を損なうとされていた。特に湿度の高い梅雨に客からのクレームが多かったという。

 今回、県工業技術センターなどは、吸湿性を従来より約16%抑えた難燃剤を新たに開発し、にじみ出しや白華を抑えることに成功。またその難燃剤を使用した木材が20分間燃えないことを確認した。さらに、マイクロ波を使って長さ2メートル超の木材を切らずに、難燃剤が木材の隅々まで分布しているか確認できる装置も開発した。

 開発された不燃木材は、2024年5月に開庁予定の八女市役所新庁舎で、軒下の天井部分「軒天」の材料として採用された。

 防火材料には他にコンクリートやれんがなどがあるが、伐採した木を燃やさず、木材として使うことで新たなCO2の排出を抑制できる。また、木材を製造するために木を伐採した後、CO2の吸収が旺盛な若い木を植えることで、一層のCO2削減につながり、地球温暖化の抑制に貢献できる。

 記者会見した九州木材工業の角博社長は「カーボンニュートラル達成のためには、省エネなどの対策だけでは限界がある。大気中の二酸化炭素を吸収したものを室内に張れる点で、脱炭素化に貢献できる」と意義を強調した。

 近年、防火木材の生産量は減少傾向。だが角社長は、建築基準法の改正による基準の緩和などで、市場は現在の5~10倍に広がると期待する。同社はそのうちの約2割のシェア獲得を目指す考え。今後、外装用の不燃木材開発や、日本より湿度の高い東南アジアを中心とした海外への輸出にも取り組む方針だ。

関連記事