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2023.11.08

お米も医薬品も列車でGO 環境にも働き手にも優しくモーダルシフト

 トラック輸送から、鉄道など環境に配慮した輸送手段に移行する「モーダルシフト」が進んでいる。運輸業界などの時間外労働の上限規制が来春から設けられ、トラックドライバー不足が深刻化する「2024年問題」への対策にもなるため、各社がトラック輸送からのシフトを急いでいる。

 全国農業協同組合連合会(JA全農)などは11月5日、米専用貨物列車「全農号」の定期運行を開始した。2週間に1度、日曜日から月曜日にかけてコンテナ100基分(約500トン)を輸送する。青森県の八戸貨物駅を出発し、秋田、新潟、金沢の各地で米を積み込み、大阪市の百済貨物ターミナル駅まで運ぶ。その距離は約1000キロ。別の列車に積み替え、関西・九州方面などへ運ばれる米もあるという。

 JA全農主食課の担当者は「24年問題を受けて、今後、鉄道輸送の需要が増えることが予想される。専用列車の枠を押さえることで、輸送力を確保したい」と説明する。JA全農によると、この専用列車によって約1万2000トン分の米がトラック輸送から、二酸化炭素(CO2)排出量が11分の1程度の鉄道輸送に切り替わる計算になる。一般的に輸送距離が600キロを超えると、コスト面でも鉄道の方が有利という。

 鉄道輸送への切り替えは他の企業にも広がっている。ネスレ日本はこれまで走行距離500キロ以上の長距離輸送では鉄道や船舶を利用してきたが、24年2月以降、走行距離200~350キロ程度の中距離でも順次、鉄道輸送を始めるという。これにより、24年の鉄道輸送量は、前年同期比4倍になる見通しだ。

 武田薬品工業は11月6日から医薬品輸送の一部をトラックから鉄道に切り替えた。東京から盛岡市内への輸送を鉄道に切り替えることで、CO2排出量を従来に比べて約6割削減できるという。今後は、輸送エリアの拡大や他社との共同配送を目指していきたいとしている。

 モーダルシフトでは船舶輸送も注目されているが、ネックもある。内航海運業の栗林商船には、見積もり依頼や問い合わせが、昨年に比べて2倍程度増えている。しかし、燃料価格の上昇・下落分を運賃に上乗せする燃料サーチャージが適用されていることもあり、トラックよりも運賃が割高になってしまうという。

 政府が10月に公表した「物流革新緊急パッケージ」は、鉄道や船舶に積み込むコンテナの大型化を推進することで、鉄道と内航海運の輸送量を今後10年間で倍増させることを目指している。栗林商船の楠肇専務は「モーダルシフトの受け皿になっていけるよう、輸送量拡大に努力していきたい」と話した。【道下寛子】

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